過去には着ぐるみを着たアルバイトが死亡した事故も…

ではいったい、”ピーポくんのなかの人”にはどれだけの負荷がかかっていたのか。過去にピーポくんの着ぐるみのなかに入ったことがある警察関係者はこう語る。

「とにかく暑いのもそうですけど、頭の部分が重くて、機動隊のフル装備よりも大変なんです。そもそも遊園地やレジャー施設の着ぐるみは業界全体で『暗黙のルール』があって被るのにも時間制限があるんです。でも我々は仕事柄、何分まで被ったら脱がないといけないといったルールも緩くて、『水分はこまめに取りましょう』と言われるくらいで…。しかも、ピーポくんって一度モデルチェンジしていて、新型タイプは丸っこくて小さめに設計されているので、自然と中に入る人も小柄な女性警察官になる、でかい男性警察官だとスネとかみえちゃいますしね 。さらにイベントだと出勤のシフトも絡んでくるから、より中に入る人が限られてきちゃうんですよ」

ピーポくんの着ぐるみは警視庁広報課が管理し、複数存在し、必要に応じて各々の管内の警察署に貸し出すという。

「それこそ熊本県の『くまモン』とか、彦根市の『ひこにゃん』のように自治体が管理しているマスコットキャラクターと違って、ピーポくんはなかに入る人も毎回バラバラだから暑さ対策がしづらいんです。そりゃ、何度も入ったことがあるベテランもいるけど、当然慣れていない人もいるわけでして…。今回ももちろん体力に自信のある署員を選んでいるはずだけど、こういった事情で事前の対策がしづらいので、勝手がわからないというのはありますよね」

ピーポくんが熱中症で倒れた当日の拝島駅ロータリー
ピーポくんが熱中症で倒れた当日の拝島駅ロータリー
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幸い、今回のイベントで熱中症になってしまった女性署員は大事には至らなかったものの、「着ぐるみ」の中の暑さを侮ってはいけない。2019年7月には、大阪府枚方市の遊園地「ひらかたパーク」にて、キャラクターの着ぐるみ姿で勤務していた男性(当時28歳)が、熱中症で死亡した事故も起きている。

「今回の一件以降、イベントをするにしてもピリピリしてますね。ピーポくんもその家族(ピーポくんには家族がいる)もこまめに休憩しています。そもそも、べつに着ぐるみを脱いではいけないというルールはないし、“マズイ”と思ったら脱いでもいいんですけど、今回倒れてしまった女性は、義務感のある人だったんでしょうね。警察官として弱っているピーポくんを見せたくなかったんだと思います。でも、今は昔と違って、脱いだからといって批判されるわけじゃないし、どこかの夢の国みたいに子どもたちの夢を背負ってるわけでもない。ピーポくんも我々も、中身は同じ警察官ですから…」(同上)

今月21日から30日にかけて実施される「秋の全国交通安全運動」。ピーポくんには、都民の交通安全を呼びかけるとともに、自身の安全も気にかけてほしい。

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班