「あ、この曲は“処刑用BGM”って言うんだ、って思いました」

――『ジョジョの奇妙な冒険』シリーズも2014年の第3部から菅野さんが引き継ぎ、その後の第4部、第5部、第6部も担当されています。『ジョジョ』は特に、戦闘シーンに使われる曲がいつのころからかネットで“処刑用BGM”と呼ばれバズッていましたが……最初にそのワードを菅野さん自身が耳にしたときはどう思われましたか?

ネットで話題になっているっていうの聞いて、「あ、この曲は“処刑用BGM”って言うんだ」って思いました(笑)。ファンの方々がそういう言葉を作ってくれて喜んでくれているとは、作った本人からすると思いもよらないわけですよ。

『ジョジョ』に限った話ではなくて、自分としては全部の作品の1曲1曲を全力で作ってるので、そのなかの1曲がそういうふうに呼ばれるようになるとは思ってなくて。でも2007年の『SP 警視庁警備部警護課第四係』のメインテーマも、突然思いもよらない盛り上がり方で評価してもらえたんです。

それから10年ぐらいは“『SP』の菅野”って言われるほど僕の代名詞のようになっていって。『ジョジョ』の“処刑用BGM”は『SP』のときとはまた盛り上がり方が違いますけど、うれしいですよね。

――さらに『ジョジョ』第5部の「il vento d'oro」が“処刑用BGM”としてさらに跳ねた感があります。Spotifyで公開された同曲は、大台の1億回再生に迫る勢いですよね。(※2023年9月14日時点で8411万回再生)

菅野氏作曲の「il vento d'oro」は約1億回再生。Spotifyでも視聴可能。Warner Bros. Japan Anime『TVアニメ「ジョジョの奇妙な冒険 黄金の風」キャラクターPV:ジョルノ・ジョバァーナ』より

3部、4部で“処刑用BGM”という呼ばれ方が定着していたので、「il vento d'oro」のときは、もう僕のなかでも「5部用の“処刑用BGM”作らなきゃな」って考えながら作ったんですけど(笑)、狙って当ててやったみたいな気持ちはまったくなくて。予想以上にファンの方々が盛り上がってくれたのは驚きましたね。

まあこういうのは運というか、長い間、劇伴の曲を手抜かずに作り続けて来たから神様が与えてくれたのかなって思ってます。

――菅野さんの仕事ぶりはとてもハイペースだと伺いました。年に10作品以上に携わり、年間400曲は作るというのは本当ですか?

そうですね、なので1日1曲作っても足りないペースで作っていかないといけない(笑)。だけど1曲にかかる時間はバラバラで、3分間の曲がそのまま3分で作れるときもあるし、極端な話、その曲を作るのに2年かかる場合もあるんですよ。

――素人でも尋常じゃないハイペースだということはわかります。ご自身で働き過ぎだとは思いませんか(笑)?

う~ん……働き過ぎかどうかはおいておいて、たとえば1年に3曲しか作らないとしたら、その3曲とも大ヒットさせるのってかなり難しいですよね。3打席立って3本ホームラン打てるとしたら、そのほうが尋常じゃない。

僕の場合は常に打席に立って、年間400打席でそのなかからホームランが何本か打てればいいなってスタンスなんです。