「大河ドラマは1年に1人しか選ばれない、ひとつの到達点」

――東京音楽大学在学中にアーティストへの楽曲提供をはじめ、卒業後は「森永」(モリナガ♪)、「HOYU」(ホーユー♪)など、有名企業のCMサウンドロゴを手掛けていたとか。そして27歳で月9作品に抜擢ですから、早くに才能が認められていました。

普通にコンビニやテレアポのバイトをしてる時期もあったので、自分的には作曲家一本でやっていけるかどうか不安でした。音楽制作会社に入ったはいいものの、試用期間中の3ヶ月でクビになったこともありましたし。

今の事務所に入ってからも、ドラマの劇伴のコンペに何回出しても通らない。たまたま『ラストクリスマス』で引っかかって劇伴デビューできて、そこからようやくドラマの仕事をいただけるようになったって感じです。

――2014年放送のNHK大河ドラマ『軍師官兵衛』の劇伴を担当した際には、相当な感慨深さがあったそうですね。

大河ドラマは国民的なドラマ枠だし、1年に1人しか選ばれないので、作曲家としてひとつの到達点だと思っています。それに大河ドラマは小さいころから親と一緒に毎週観ていて、小学生時代から漠然と大河ドラマの音楽を作りたいという気持ちは持っていたし、中学生のときにはもう現実的な目標として考えてましたから、うれしかったですね。

しかもショパンの祖国のポーランドのオーケストラとレコーディングをできたのも、とても大きな価値のある経験だったなぁと思います。

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――大河ドラマ以外に目標としていることはありましたか?

今の事務所は社長と縁があって所属したんですけど、入った当時社長に「僕は月9と大河とガンダムをやれる作曲家になりたいんです」って言っていたんです。宣言っていうほどではないんですけど、20年ぐらい前から目標として思っていたんですよ。

――2004年の『ラストクリスマス』、2014年の『軍師官兵衛』、同年の『ガンダム Gのレコンギスタ』で見事コンプリートしたわけですね。それだけでなく菅野さんは『踊る大捜査線』や『名探偵コナン』といった、90年代から大人気だった国民的作品の劇伴も担当されています。

『踊る~』は2010年の劇場版『踊る大捜査線 THE MOVIE3 ヤツらを解放せよ!』からで、『名探偵コナン』は2022年の劇場版『名探偵コナン ハロウィンの花嫁』から担当させてもらっているんですけど、最初はやっぱり「僕が引き継いで大丈夫ですか?」っていう気持ちはありました。

作曲家が変わることなんて求めてないファンもいるわけだし。でもやっぱり、監督やプロデューサーさんに「新しい風を入れてもらいたい」ってオファーをもらったからには、昔からのファンのみなさんにも受け入れてもらって喜んでもらって、そのうえで僕だからできる曲を作っていかないとと思うようになってましたね。プレッシャーを感じつつも、粛々と曲作りをしていくっていう感じでした。