いまだにあれの正解がよく分からない

――川口さんは五島列島の出身ということもあって、自然に触れて懐かしいということでしたが、中村さんはいかがですか? リフレッシュされていますか?
中村 僕は自然とか虫が好きなので、この撮影はかなり満喫していますね。あまりにも暑いときは危ないので外に出ないようにしていましたけど、撮影がスタートしたのは5月頃で、その頃は気候もよかったから、よく虫を探しに歩いていました。
川口 この間、猿が出たんですよ。6頭ぐらい。ボスがすごく大きくて。何かワクワクしましたね。東京で大きな猿が見られるなんて。
――本当に自然豊かなところですよね。目の前の山の緑もモリモリしていてすごいです。
川口 すごいですよね。ブロッコリーに見える。
中村 どうしたのかな、春奈ちゃん、疲れているのかな(笑)。
――話題をドラマに戻しますが(笑)、中村さん演じる三馬太郎が、ドラマの最初と最後でカメラ目線になって語るという演出がとても印象的でした。視聴者との橋渡しをする役でもあると思いますが、このシーンはどのように作られていったのでしょうか? 中村さんのアイデアがあったりしたのですか?
中村 ないです。台本に書いてあったままですね。いまだにあれの正解がよく分からないままやっています。
川口 安心しますね!
中村 安心するの? 
川口 はい。問い掛けられている気がして。
中村 皆さんやったことがないから分からないかもしれないですけど、あれをやるとき、カメラのレンズの手前にフィルターがあるんですよ。そのフィルターに反射して、だいたい自分の顔が見えているんです。自分の顔を見ながら芝居しているような感じになって、すごく気持ち悪いんですよ(笑)。だから、いまだに慣れないですし、正解もよく分からずやっています。ただ、今の時代、本当にCGが発達しているので、僕がどんな芝居してもCGで思うように直してくれるので。
プロデューサー そんなわけないですよ。
中村 金さえ積めば何でもできるんです。
プロデューサー そんなわけありません(キリッ)。

「最終回は“100倍返し”。 “自然”と“笑い”に包まれた撮影を語る」中村倫也×川口春奈 ドラマ『ハヤブサ消防団』放送記念スペシャル対談_7
かわぐち・はるな ◆ 1995年長崎県生まれ。ドラマ「麒麟がくる」「極主夫道」「着飾る恋には理由があって」「ちむどんどん」「silent」、映画『九月の恋と出会うまで』『聖地X』など多くの作品に出演。映画『マイ・エレメント』では、日本版主人公の声優を務めた。2024年2月9日公開の映画『身代わり忠臣蔵』への出演を控える。オフィシャルYouTubeチャンネル「はーちゃんねる」も人気。

消防団のおじさま達とは仲良くなれた!?

――川口さん演じる立木彩は、東京からハヤブサ地区に引っ越してきた映像ディレクターですが、時に太郎に嘘をつくなど、本心が見えづらい謎の女性でした。物語の中盤になって正体がどんどん明らかになっていき、SNSなどではその謎をめぐる考察でも盛り上がりましたが、川口さん自身、どのように役と向き合っていましたか?
川口 激ムズでしたね。今までで一番、よく分かってないと言ったらあれですけど、難しい役だなという印象です。彼女の気持ちとか、葛藤していくさまみたいなものは分かってはいるんですけど、実際に表現するのはなかなか難しいなと思いながら演じていました。
中村 特に前半は、作劇上の都合じゃないけど、細かい心情と動きが必ずしも一致していないときもあったと思うし。
川口 そうですね。怪しさを演出するための。
中村 何だか分からないけど、すっと無表情になるとか。
川口 そういうのも難しかったですね。
――今日の撮影はどうでしたか? 重要なシーンの撮影だったようですが。
川口 今日のシーンはほぼほぼラストに近いので、難しさでいったら中盤のほうが難しかったです。やっぱり後半になるにつれて自分なりに理解も進んでいくし、腑に落ちていくことが多いんですけど、中盤はどっちつかずというか、どう見せていけばいいか考えることが多くて難しかったですね。
――先ほどの写真撮影のとき、お二人で軽口を言い合ったり、とても自然な感じで会話をされていましたが、ドラマ撮影の合間はどんな話をしていますか?
中村 今日、どんな話したっけ。
川口 何だっけな……。本当に覚えていないレベルの内容です。話さないときだってあるし。
中村 雑談ってやっぱり雑だから雑談なんですよ。
――演技に関して話をすることはないですか?
中村 そんな話はしないです。できる限り仕事の話なんかしないよね。
川口 はい。しないですね。
中村 役者で仕事の話をする人、滅多にいないですよ。話をしだしたらたぶん嫌われます。うるせえなって(笑)。
――ベテラン揃いの消防団のおじさま達とも?
中村 しないです。だって、そんなもの芝居で見せればいいんですよ。話さなくたって分からせるのが芝居なので。
――たしかにそうですね。ところで、消防団のおじさまといえば、ドラマの制作発表記者会見の際に、川口さんが消防団の皆さんのチームワークが良すぎてなかなか入っていけないということをちらっと話していましたが、撮影を重ねる中で関係性にも変化はありましたか?
川口 最後まであの中には入れず終(じま)いでした(笑)。
中村 後半になってからは一緒のシーンがあんまりなかったもんね。
川口 そうなんです。第4話で居酒屋さんかく(編集部注:ハヤブサ消防団のメンバーが毎晩のように集う居酒屋)に集まってみんなで乾杯しているところは、唯一わいわい楽しく迎えられたような、そういうシーンだったかな。その日の朝に(橋本)じゅんさんと共通の話題が見つかって、そのことでずっとおしゃべりしていたのは覚えています。

最終回メイキング写真から

「最終回は“100倍返し”。 “自然”と“笑い”に包まれた撮影を語る」中村倫也×川口春奈 ドラマ『ハヤブサ消防団』放送記念スペシャル対談_8
中村倫也さん演じる主人公・三馬太郎が暮らす桜屋敷での撮影の様子。
立木彩役の川口春奈さんとの緊迫した会話シーンを収録。
「最終回は“100倍返し”。 “自然”と“笑い”に包まれた撮影を語る」中村倫也×川口春奈 ドラマ『ハヤブサ消防団』放送記念スペシャル対談_9
「最終回は“100倍返し”。 “自然”と“笑い”に包まれた撮影を語る」中村倫也×川口春奈 ドラマ『ハヤブサ消防団』放送記念スペシャル対談_10
太郎が執筆活動を行うデスク。
太郎は虫が苦手で、さりげなく殺虫剤が置いてある。