「つながる」はずが孤独に
SNSは人と人とをつなぐ、文字通り「社交的な(social)」ツールですから、SNSを使えば認知症リスク要因の一つである「社会的孤立」を解決することができるのではないかと、お考えの方もいるかもしれません。SNS上のつながりは、本当に誰かと「つながっている」という感覚を私たちに与えてくれるのでしょうか?
内閣官房が2021年に実施した「人々のつながりに関する基礎調査」の結果を見てみましょう。
同居していない家族や友人たちと「直接会って話す」頻度について、「全くない」と答えた人たちのうち、孤独であると感じている(「あなたはどの程度、孤独であると感じることがありますか」という質問項目に対して、「しばしばある・常にある」「時々ある」「たまにある」と回答した)人の割合は、48.6%でした。
週4〜5回以上、直接会って話す機会がある方々の場合は、28.7%でした。やはり、対面コミュニケーションの頻度が低い人ほど孤独で、頻度が高くなると孤独感は低くなることがわかります。
次に、SNS(LINE等)をする頻度について「全くない」と回答した人たちでは、孤独であると感じている人の割合は39.1%でした。週4〜5回以上、SNSをする方々の場合は、33.1%でした。対面コミュニケーションと比べて、SNS使用の頻度と孤独感の関係は顕著に見られませんでした。
つまり、対面コミュニケーションには孤独感を減らす効果がありますが、SNS上のやりとりはその効果が薄いのです。やはり、オンライン・コミュニケーションは直接会うまでの「つなぎ」に過ぎないといえるでしょう。
香港では、平均年齢約21歳の大学生361人を対象に、インターネット依存傾向と孤独感の因果関係を調べるために、追跡調査が行なわれました。この研究では、インターネット依存傾向、孤独感、対面またはオンラインでのコミュニケーション頻度を尋ねるアンケート調査を4カ月間隔で2回行ないました。
解析の結果、初回アンケートの時点でのインターネット依存傾向の高さが、4カ月後の孤独感の高さに影響を与えていることがわかりました。さらに、対面コミュニケーションの頻度が高いほど孤独感が低く、インターネット依存傾向も低くなることが明らかになりました。一方で、オンライン・コミュニケーションは孤独感に影響を与えず、インターネット依存傾向を高めていました。
このように、オンライン・コミュニケーションは「社会的孤立」の解決にはつながらず、インターネット依存傾向を高め、逆に孤独を感じてしまい、将来の認知症リスクを高めてしまう可能性があると考えられます。