2000円も払って「ジャケ買い」などできない
「作品によっては妥当」派もいる。
「派手なアクションの洋画が好きなので、スマホで観るより劇場で観たい。そういう映画なら2000円でも構わないが、地味な日本映画には絶対に払わない」(男性・20歳)
「『名探偵コナン』以外は映画館に行かない。『コナン』なら、どれだけ値上がりしても行くと思う」(男性・21歳)
「テニプリが好きで、『リョーマ! The Prince of Tennis 新生劇場版テニスの王子様』は週替りの特典が欲しくて6回か7回、映画館に行きました(笑)。好きだから2000円なんて全然高くない」(女性・22歳)
すごく好きな作品ならどれだけ高くても行くが、それ以外は定額制動画配信で済ませる、という学生は多かった。要は2000円も払って冒険はできない、ということだ。昔の言い方で言うならレコードの「ジャケ買い」である。面白いか面白くないかわからないものに、自らの貴重な時間とお金など使えない。若者にとって映画館は、絶対・確実に面白いという保証がある作品を観に行く場所、もしくは特定作品のファンとして詣でる場所になっている――のかもしれない。
料金が2000円になったからといって、観客数が減ることはないだろう。ただし、ヒットする映画としない映画の二極化が、今以上に進行する可能性はある。なにしろ2000円も払うのだ。「皆が観ていて評判のいいヒット作=確実に満足度の高い作品」にはますます人が集う。一方で、知名度が低く「面白いか面白くないか、定かではない」作品は今まで以上に敬遠される。
その先に待つのが、「絶対確実で安パイな映画だけが作られる未来」でなければよいのだが。
文/稲田豊史