定住型の移民、抵抗感強く

男女の懐事情とジェンダー意識を探る意図で、初めてのデートで費用は全額男性持ちか女性と分担かを尋ねた。全額男性が負担すべきだとの回答が26.9%と、負担すべきだとは思わないの39.9%を下回った。

専業主婦が多く賃金や職務内容の男女差が大きかったバブル期は、男性の全額負担で女性と豪華な食事を楽しむケースが多かった。今でも50~60代の男性は全額負担すべきだと考える割合が4割超と20代男性の19.0%と大きな差がついた。

男女別では男性の32.2%が負担すべきだと考えるのに対し、女性は21.6%。男性にとっては初デートの金銭的な不安はやや薄らいでいるのかもしれない。

日本は少子高齢化に伴う働き手不足が深刻で、政府は外国人労働者の受け入れ拡大を進めている。人口減への対応として定住・永住可能な移民を積極的に受け入れるべきか聞いたところ、受け入れるべきではないが37.5%と受け入れるべきだの26.1%を上回った。

全世代で受け入れるべきではないが上回り、特に30~50代の女性で受け入れに慎重な回答が目立った。40~60代の男性は受け入れ派が3割超と相対的に受け入れに前向きだった。

【縮小ニッポンの本音】「親より豊か」は1割どまり、「家計が苦しい子持ち家庭」は7割、という統計の現実_7
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「そこそこ幸せ」で貧しく―識者の見方 中央大教授 山田昌弘氏

結婚や出産が減っている理由として経済的要因を挙げた人が多かった。若年層だけでなく50~60代の親世代も若年層の家計に懸念を持っていることが調査で明らかになった。若年層への経済支援は不可欠だ。

結婚減の理由として50~60代女性の4割超が「独身者が親との生活に満足している」と答えたのも興味深い。一部の若年層は便利で快適な実家生活を捨ててまで結婚をしようと思わないのかもしれない。

移民は変化を好まない日本人の志向が表れた。移民のみならず日本社会は年代を問わず今のままでよいと考える人が多い。社会全体が豊かになり、目先の生活に困る人が減ったのが背景にあると考えている。日本人は徐々に貧しくなることは受け入れてしまう。社会保障費の増加も一定程度は受け入れつつ「そこそこ幸せ」を続けるのだろう。

少子高齢化や人口減少を深刻な問題として日本人が気付くのは、優秀な人材の海外流出が本格化したときだろう。インドやフィリピンなど英語が堪能な人が多い国ではすでに人材流出が起こっている。

※調査の概要 調査会社マイボイスコムのモニター1000人を対象に2022年9月30日~10月4日にネット調査した。20~60代の各年代200人(男女同数)を性・年代別に無作為抽出した。

#1 少子化克服は100年かかる国家事業--人類史上初の人口減時代、労働輸出国の若者が減り始めた世界で「今後30~40年は移民を巡っての競争になる」
#2 性的少数者を受け入れている国ではGDP上昇も…欧米で進む多様な家族の形を認める社会がもたらすもの

『人口と世界』(日経BP 日本経済新聞出版)
日本経済新聞社
【縮小ニッポンの本音】「親より豊か」は1割どまり、「家計が苦しい子持ち家庭」は7割、という統計の現実_8
2023年6月24日
¥1,980
260ページ
ISBN:978-4-296-11624-9
人類史上初!人口減時代迫る
忍び寄る停滞とデフレ、不安定な年金制度、移民なき時代の到来・・・
危機にあらがう各国の戦略とは?

・「豊かになる前に進む高齢化」苦しむ中進国
・新たな時代の「移民政策」に揺れる 欧州の懊悩
・「おひとりさま」が標準に 孤独との共生
・「縮む中国」 衰退が招く安全保障上の危機
・出生率を上昇させたドイツの「両親手当」
・「多様さ」認め、寛容な社会目指すデンマーク
・人口より「生産性優先」のシンガポール

これまで人口増を頼りに成長を続けてきた世界。
いまも進みつつある人口の減少は、社会に大きなひずみをもたらした。
一方で、独自の視点から問題に立ち向かう政策が功を奏した国も――
日本の進むべき道はどこにあるのか。
いまある危機を直視し、未来を共に考える日経新聞一面連載を加筆のうえ書籍化。
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