口を閉じているとき、無意識に奥歯が当たっていませんか? 歯の天敵「TCH」の噛みグセが歯を失うリスクを増大させている!
歯を失う疾患として、「虫歯」「歯周病」は広く知られているが、口の健康を損なう隠れた要因としての“ブラキシズム”を知っているだろうか。そしてそれと関係が深いかもしれない無意識の噛み癖「TCH」とは何なのか。『ブラキシズムが歯を壊す! 隠れた「歯の天敵」を知っていますか?』(現代書林)より、一部抜粋・再構成してお届けする。
『ブラキシズムが歯を壊す!』#2
TCHがブラキシズムを加速させる?
私がTCHのことを知ったのは、2009年に地元歯科医師会のスタディグループ(有志勉強会)に木野先生をお呼びして、お話を聞いたときでした。
当時、私はブラキシズムにスプリント治療をしていましたが、効果がある患者さんがいらっしゃる一方で、なかなか思うような結果が得られない患者さんもいらっしゃいました。
そんなときにTCHのことを知り、ブラキシズムとの関係を考えるようになりました。
まず思ったのは、夜間はブラキシズムがなくても、昼間TCHがあり、それが習慣化したら、噛みしめ・食いしばりに結びついていくのではないだろうかということでした。
しかも、力仕事のときや緊張したとき、極度に不安が強くなったり、ストレスがかかるようなとき、じっと我慢しているとき、何かに集中しているときなどに強く噛みしめることで、ブラキシズム(夜間の歯ぎしりや昼間の噛みしめ、食いしばり)も加速するのではないかと思ったのです。
そこで、TCHの考え方を治療に導入するようになりました。
ブラキシズムのある患者さんに、TCHを意識して、生活習慣を見つめ直すようにアドバイスしたところ、よい結果が出てくる患者さんが現れるようになり、それなりの成果を感じるようになったのです。ブラキシズムの改善に向けて、一筋の光明が見えてきた!と思いました。
木野先生は顎関節症がご専門で、その治療に長年携わってこられました。木野先生たちの研究では、顎関節症の患者さんにTCHの人が多く、この癖が顎関節症の治療成果を上げられない要因であるらしいことがわかってきたのです。
歯やあごの骨や関節、周囲の筋肉が丈夫な人を除いて、TCHのある人は、筋肉症状や顎関節症状が出やすくなるそうです。ブラキシズムも、同じようなことがいえるのではないでしょうか。
もちろん、ブラキシズムイコールTCHではありません。夜型の歯ぎしりや食いしばりと、昼間型のTCHや噛みしめとの関係は、まだよくわかっていません。
しかし、長い人生で長期に使う歯や口腔組織を守るために、ブラキシズムやTCHということも配慮しながら、歯科治療に取り組む、あるいは予防歯科を実践していくことが、これから求められるのではないでしょうか。
文/池上正資 写真/shutterstock
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『ブラキシズムが歯を壊す! 隠れた「歯の天敵」を知っていますか?』
池上 正資
2023/5/10
¥1,540
200ページ
ISBN:978-4774519777
「同じ歯の銀歯が何度も取れる」「同じ歯ばかりが痛む、虫歯になる、しみる」・・・
皆さん、歯の治療でこういう経験はないでしょうか?
普通、虫歯などは一度治療が終われば、短期間で同じ歯が悪くなる事は滅多にありません。
ただ、そういう訴えをしてくる患者さんが多くいらっしゃることも事実なのです。
それはナゼか?
歯科医になって40年、開業して35年を超える治療実績を持つ著者はそれをずっと考えてきましたが、あの時気付いたのです。
「ブラキシズム」が原因だと。
(「ブラキシズム」とは、「歯ぎしり」「噛みしめ」「食いしばり」などの噛み癖の総称)
「ブラキシズム」という考え方自体は20世紀初頭には知られていました。
当時はあくまで「クセ」であり、病気ではないという考え方です。
ただ、近年の歯科医学の研究の結果、単なる「クセ」では片づけられず、口の中に多くの問題を引き起こす原因になってきているという事が分かってきています。
ところが、患者さんだけではなく、歯科医師の中でもまだ広く知られていないのも現状なのです。
著者は現場での治療を行うにつれ、一般の人に広まっている症状だということに危機感を持っています。
そもそも「ブラキシズム」の多くは無意識、あるいは就寝中に行っているので、本人は気付いていない事が厄介な点です。
端的に言えば「ブラキシズムが歯を壊す」のです。
著者は「ブラキシズムをどうするか」という問題、そして解決法・治療法を読者の皆さんと共有したいと思い本書を書きました。
【目次】
はじめに
第1章 あなたのお口の悩み、「ブラキシズム」が本当の原因かもしれません
第2章 虫歯や歯周病とブラキシズムの深い関係
第3章 歯科の治療法とブラキシズム ―ブラキシズムで咬合が崩壊する!?
第4章 ブラキシズムの治療 ―治せなくても軽くすることはできます
第5章 大事なお口を守るための予防歯科医療
第6章 歯科医院との上手な付き合い方
おわりに