「夏休みの一日くらい家族サービスしてよ」
病院へ行ったところ、医師からはこう言われた。
「発達障害です。この特性は治るものではありません。周りも本人もそれをきちんと理解し、どうすれば仲良くやっていけるかを相談して決めていってください」
話し合ったところ、夫はルーティンの1つとして1日おきに性行為をするものだと考え、それを頑なに守っていたらしい。そこでA子さんは、そんなふうに考える必要はないから、性行為はしばらく控えようと提案した。
ある日、A子さんはこう言った。
「ねえ、夏休みの一日くらい家族サービスしてよ」
夫は答えた。
「嫌だ。自分の時間がなくなるから」
それを聞いたとき、A子さんは、夫の視界には自分たちは存在してないのだと確信した。これまでは義務として行っていた性行為によってかろうじてつながっていたが、それがなくなったことで、夫は自分の世界だけに没入し、家族への関心を失ったのだ。
――もう無理だ。
A子さんは再び義理の両親に会って、離婚を考えていると話した。義理の両親はもう少し話し合ってみてはどうかと提案した。だが、A子さんには夫を変えられる自信はなく、離婚することにした。
「前夫は真面目だし、仕事ができる人なので、可能なら一緒にいられたらと思っていました。でも、発達障害って話し合って解決するのがすごく難しいものだと思うんです。もし話し合って家族サービスをしてくれるようになったところで、彼にとってはそれも義務の一つとしてやっているだけで、本当の意味で私や子どものことを思って動いてくれるわけじゃない。そんな関係がずっとつづくことがつらくて離婚を決めたのです」