親からも「恋人いないの?」と聞かれるが・・・
シンガポールでも、かつては「結婚しなさい」と言われたが、今はあまり言われなくなったという。シェリーさんの家族は? と尋ねると、
「恋人いないの? とは聞いてくるけど、聞こえなーい」
耳を両手で塞ぐ真似をした。勉強、研究で忙しいと言いながらも、シェリーさんにはチャーミングなところがいっぱいある。こうなったら、せめて「恋人」経験くらいさせてあげたいと、親心のようなお節介心が私に生まれてきた。ところが、
「恋人、欲しいと思ったことない。私は時間ないし。街に行けば、みんな恋人がいて楽しそうで、それはそれでいいんじゃない? 私は研究が楽しいし」
どう質問や見方を変えても、やっぱり研究と勉強に戻ってくる。若い今は研究に力を注いでいるので、1人でいても寂しさを感じないでいられる。もしかしたら年を重ねると、シェリーさんだって誰かと一緒に生きたいと思うことがあるかもしれない。
「でもひとりっ子って、1人でいることをあまり寂しいと思わないし……これからも」
シェリーさんの言葉はよく理解できた。確かに、私もひとりっ子で1人でいることが苦痛でないし、1人で楽しむ方法をいっぱい知っている。だから、「研究の仕事は一生します」と言うシェリーさんの言葉も、信憑性のあるものとして受け止めることができた。シェリーさんは将来のために保険などにも入って準備するつもりではいる。
ひとりっ子ゆえの責任で、シェリーさんもまた研究をすること以外に親を一生支えていかなくてはいけない。だから余計に収入にも関係する研究をやめるわけにはいかない。
「実家への仕送りの他に、実家の光熱費やガソリン代も、私のクレジットカードで支払っています。だから余計、家族は結婚しろと言えないんじゃないかな。私が結婚したら今までみたいにお金を毎月もらえなくなるでしょう?」
シンガポールでは、学校でも「親の面倒を見ること」や「年上の人を尊敬すること」を教えられるそうだ。
「家庭にもよりますけど、富裕層の子供も、就職したら親に毎月お金を送る。これが普通なんです。兄弟がいっぱいいる人は、誰かがやれば、やらなくても大丈夫ですし」