「ずーっと勉強です」
シェリーさんは聡明でキュートな女性だ。ロングヘアの肩から下をピンクに染めている。2ヵ月前、シンガポールに帰った時、美容師の従姉妹に「実験で」染めてもらったそうだ。目がパッチリとして鼻筋が通っているので、華やかなヘアスタイルもよく似合う。カラーリングをしていても、髪の毛はすこしも傷んでおらず、美しかった。
「幼稚園の時から、お母さんに『勉強しなさい』って言われて、家庭教師に教えられていました。イヤだったけど、しょうがないよね。勉強しないと、いい大学へ行かれないから」
シェリーさんは幼稚園の頃、「隣のお姉さん」に英語と数学を教えられていた。シンガポールでは、母国語である英語を小学校へ行く前に習い始めるのが一般的という。シェリーさんが小学校に入ると、プロの家庭教師が週に3回、家に来た。
国立大学への道は大変な難関で、小学校卒業時に行われる初等学校卒業試験(PSLE)が、その後の進路に大いに影響する。PSLEの結果によって、エクスプレス、ノーマルアカデミック、ノーマルテクニカルコースの三つに分けられる。
中等教育(中学、高校)では、エクスプレスとノーマルアカデミックのコースのみが大学準備コースへ行くことができる。エクスプレスコースのみ、卒業時にGCEIB(大学入学資格)を取得し、さらに1年の就学ののち、試験を受験できるそうだ。ちなみにノーマルアカデミックコースの人は、職業訓練学校へ入学したり就職することになる。
「成績によって、上位何%かがトップの学校に行けて、残りのうちの何%かが、その下のレベルの学校……という具合に差が出るんです。中学3年生の時も、高校に行ける人、行けない人……と振り落とされていって、大学も同じ。大学に入っても日本みたいに遊んじゃうと卒業できなくなるので、ずーっと勉強です。ちゃんと卒業しないと、いい仕事に就けない。仕事がないと結婚もできない。給料の高い仕事に就かないと、生活はけっこう厳しくなるんです。シンガポールは物価が高いから」
ということは、いい生活ができるのはほんの一握りの選ばれた大学卒業者だけであって、多くの人たちはそうでない生活を強いられることになるのではないか。