解説: 甘やかし型とは?
甘やかし型の親は、子どもの顔色をうかがい、子どもの言いなりになるのが特徴です。子どもがほしいものをほしいだけ与えたり、好きなことを好きなだけさせたりし、我慢させることをしません。
甘やかし型の養育態度で育てられた子は、何でも自分の言う通りになると思い、自己中心的になります。共感性が乏しく、他人の目線で物事を考えることが苦手です。思い通りにいかないと人を責めたり、乱暴な態度をとったりすることが多くなります。
自ら状況判断する必要がなく育っているため、空気の読み方がわからず、浮いてしまいやすくなります。
人は折り合いをつけて大人になる
ナルミは典型的な甘やかし型の家族に育てられた子でした。とくに祖父は、ナルミがほしいものは何でもすぐに買い与え、やりたいと言ったことは何でもやらせてあげようとしています。
ダンスを習いたいと言ったら、すぐさまプロダンサーの家庭教師をつけ、家にダンスルームまで作ってしまうのだからすごいものです。しかも、ナルミがまだ幼稚園生のときです。そうした余裕があるからいいと言えばいいのですが、多くの親はもう少し様子を見ながらサポートをするのではないでしょうか?
たとえば、しばらく体験してみて「本当に続けたいのだったら、こういうプランにしようか」と話し合いながら環境を整えるのです。
やりたいと言ったらやらせて、やめたいと言ったらやめさせるのを繰り返していては、忍耐強く続ける力が身につきません。実際、ナルミの興味は長続きすることがありませんでした。ペットにしても、最初だけかわいがったものの、途中で飽きて世話をしなくなりました。
こういうとき、保護者は指導すべきです。生き物を育てる責任について教えなければなりません。それなのに、性懲りもなく新たなペットを買い与えるとは困ったものです。ナルミは我慢したり、自分の欲求と周囲の状況との折り合いをつけたりといった経験をしないまま大きくなっていったのです。
過保護型でお話ししたのと同じように、甘やかし型で育てられた子も欲求不満耐性が低くなります。思い通りにいかない出来事にうまく対処できず、逃避的行動をとったり攻撃的になったりするのです。
ナルミの場合は、思い通りにいかないことがあると暴力を振るうようになりました。最初に家庭内で暴れたとき、適切な指導ができればよかったでしょう。不満に対してどう対処すればいいのか。一緒に最善の策を考え、「辛いときは支えるからね」と伝えるのです。
ところが、ナルミの家族は一切指導することがなく、事件をも握りつぶしました。家庭内暴力などなかったことにして、ナルミのご機嫌をうかがう生活を続けたのです。