下落が続く中国の住宅平均相場

リーマン後、中国の不動産相場が崩落しなかったのは、謂わば米国の量的緩和のおかげである。第2章で詳述したように、米国で増発されたドル資金の相当部分が中国に流入し、それが中国人民銀行による量的緩和を可能にし、人民銀行からの資金供給を受けた商業銀行が前年比で2倍前後の規模で融資を拡大した。

2015年前後の不動産相場の不安定な状況は、巨額の資本流出に伴うもので、米金利引き上げと人民元の切り下げが影響した。このときは前述したように、FRBが追加利上げを見送って中国の金融危機を防いだ。

2年前から続く中国の不動産相場急落が信憑性を与える「チャイナリスク」。リーマンショックを経験した日本はどう捉えるべきなのか_4
2021年以降の中国の住宅平均相場

2021年以降の住宅相場下落は2年も続き、2023年3月は底を打ったように見えるが、依然として停滞ムードにある(上図)。米国では住宅相場の下落が始まって1年あまりでリーマンショックが起きている(下図)。それを考えると、中国の不動産相場急落は不気味だ。

2年前から続く中国の不動産相場急落が信憑性を与える「チャイナリスク」。リーマンショックを経験した日本はどう捉えるべきなのか_5
米住宅指数
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しかも、2022年3月以降、外資などによる資本流出が止まないありさまで、外貨準備も減りつづけている。それは人民銀行の外貨資産を減らす結果を招いているが、習政権は人民銀行に対し、資金増発を命じ、不動産市況の底入れを図っている。

それが効いたのか、2023年6月時点では金融危機は表面化していない。米国や日本と違って、党がカネを支配する中国では、バブル崩壊危機になれば、ただちに強権を行使してカネを商業銀行に供給し、同時に国有企業に命じて不動産を買い支える。しかし、そのやり方でいつまで持つか、不安は消えない。

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#3 北海道のリゾートに沖縄の離島…中国人が進める日本の国土買いの脅威。チャイナマネーにのみ込まれないためにするべき2つのこと

『米中通貨戦争――「ドル覇権国」が勝つのか、「モノ供給大国」が勝つのか』(育鵬社)
田村秀男
2年前から続く中国の不動産相場急落が信憑性を与える「チャイナリスク」。リーマンショックを経験した日本はどう捉えるべきなのか_6
2023年7月30日
1,980円
304ページ
ISBN:978-4-594-09391-4
ドルを完全否定したくてもできない中国、
勝てるとわかっていても〝返り血〟が怖い米国
ロシアによるウクライナ侵略の本質は、米中の通貨代理戦争である。グローバル化された世界で基軸通貨ドルを握る米国に、ドル覇権に挑戦する、モノの供給超大国中国。その戦場のひとつがウクライナである。覇権争いはウクライナに限らず世界のあらゆる場所や分野で演じられている。
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