石川と青木の影響力

石川は「200勝まであと何勝」ということが注目されているが、とにかく練習熱心で、球場に早くやってきて準備を怠らない。キャンプでも2月1日、初日からブルペンに入り、「ちょっとだけです」と言いながら、50球ほど投げ込むこともある。石川のそうした姿勢を見た後輩たちが「自分もやらねば」と思うのは自然な流れだろう。

僕は投手コーチとして石川のことを見ていた時期もあるので、彼が数や量を重視して開幕に備えていくタイプだということを理解している。ピッチングをして、ランニングをして、その後にまたピッチングをする時さえある。

真面目なだけでなく、柔軟性もある。僕が投手コーチの時だったか、「気持ち良く投げられるキャッチャーがいるんだったら、遠慮なく言ってもらっていいからね」と伝えた。石川ほどの格の投手ならば、捕手の希望は通る。ところが石川は「誰に受けてもらっても大丈夫ですよ。ありがとうございます」と言うのだ。そして彼は、どの捕手と組んでもうまくピッチングを組み立てる。

柔軟性は、好奇心にも表れている。若手に対して「それ、どうやってるの?」とどんどん質問を繰り出していく。いまのフレッシュな気持ちを維持していれば、間違いなく200勝到達は可能だろう。

青木は、ポジションを争うライバルであっても、惜しみなく技術を伝える。技術的なアドバイス、ヒント、聞かれればなんでも答えられる「辞書」のような存在だ。

彼らがリーダーとしての資質に恵まれているなと感じるのは、みんなの前で面白いことを言う勇気を持っていることだ。ユーモアがあるし、すべることさえ気にしない。ちょっとふざけたり、みんながクスッと笑ってしまうようなことを平然と言ったりする。先輩風を吹かせ、しかめ面をしているような人間ではない。彼らがスワローズの雰囲気、トーンをつくってくれていると思う。理想の職場の実現には、ベテランの存在が大きな意味を持っている。