プロモーターとしてもっとも幸せを感じる瞬間
――その後、1997年に始まったPRIDEでは「ヒクソン・グレイシーvs髙田延彦」や「ホイス・グレイシーvs桜庭和志」といった数々の伝説的なマッチメイクを成功させます。マッチメイクをする上で、喜びのピークというのはどのあたりにあるものなのですか。やはり、対戦が決まった瞬間ですか。
今回の「超RIZIN.2」(7月30日開催)では、朝倉海選手が本番直前に故障で欠場することになってしまったように、私たちは試合当日、2人がリングに上がって、ゴングが鳴るまで気は抜けないんです。あと、そのマッチメイクの期待値が大きければ大きいほど、凡戦だったときの失望も大きい。
なので、試合が始まって、内容も期待以上のものとなり、会場のお客さんが熱狂している様子を実感できたときがプロモーターとしてもっとも幸せを感じる瞬間ですね。
――これまでその幸せがいちばん大きかったのは、どの試合のときでしたか。
いちばん興奮した瞬間か……。何だろうな。いちばんやらかしたと思ったのはPRIDE.1かな。髙田(延彦)さんとヒクソンの試合。髙田さんが勝つというのが最高のシナリオだったんですけど、結果はまったくの逆。観客の中には泣いている人もいたけど、本当に葬式みたいだった。あんなに苦労したのにこんな結末が待っているなんて…と。あのとき、つくづく「俺は持ってないな」と思いましたね。穴があったら入りたかった。
――桁違いの失望感を味わえるというのも、この仕事の裏の醍醐味なのかもしれませんね。
苦労した分のリターンが十分にあったという意味では、直近の「THE MATCH 2022(那須川天心vs武尊)」かな。PRIDE時代から通してもいちばんの熱を作り出せた試合だと言ってもいいかもしれない。