親に家族信託を検討してもらうコツ
高齢の親を持つ子どもにとって、親の介護費用は喫緊の課題だ。親の意思決定能力がしっかりしているうちに対策を考えたいが、問題は、どのように話を持ちかけるかだ。
お金の話は、なにかとこじれやすい。「財産を狙っているのか」と思われてしまうと、誤解を解くのもひと苦労だ。また、「そろそろ認知症になってしまうかもしれない」と切り出すことで、親の尊厳を傷つけてしまうかもしれない。余計な誤解を避けるには、どのようにアプローチすればいいのか。
「多くの高齢者は『家族に迷惑をかけたくない』という意識を持っています。あらかじめ準備をしておかないと家族に負担がかかるということを、まずは知ってもらうことから始めるとよいのではないでしょうか」(山崎氏)
また、いつから準備を始めておくかも重要だ。親が元気なうちはまだ大丈夫、という考えもあるが、認知症になってからでは家族信託を利用できない可能性がある(認知症の程度にもよるが、委託者に十分な意思決定能力がないと判断された場合には利用できないケースがある)。
「それまで元気だったお父さんが、新型コロナウイルス感染症で2週間隔離になって、帰ってきたら孫の顔もわからなかった……。そんな話も実際にありました。認知症は急激に進行してしまうこともあるので、タイミングの見極めは非常に困難です。ただ、帰省したときに余計なものをたくさん買い込んでいたとか、認知症の予兆のようなものを感じたときには、検討を始めてみるといいのではないでしょうか」(山崎氏)
早い段階で親と話し合いができれば、信託の内容をしっかりと詰めていけるだろう。すでに述べたとおり、家族信託は信託する資産の割合などを柔軟に設計できるので、丁寧に対話を続けていけば、お互いに納得できる形が見つかるはずだ。
家族信託に興味がある方は、まずはファミトラのホームページにアクセスし、利用者のインタビュー記事を読むことから始めてみるといいだろう。具体的な流れなどがイメージできるはずだ。
取材・文/小平淳一