「殺しの捜査を100件近くやっているけど、こんな終わり方はない」

当時、X子さんが現場に呼んだというY氏も、種雄さんの死亡推定時刻から考えると、実行犯ではなさそうだ。佐藤氏は消去法で考え、第三者のZ氏の関与を疑った。

だが、佐藤氏が他の捜査員にこの“見立て”を共有することはなく、捜査は「終わり」を迎えた。

生前の安田種雄さん
生前の安田種雄さん

当時、国会が始まると木原氏が子どもの面倒を見られないという理由で、X子さんの取り調べは、いったん、10月24日に国会が開会するまでとされていた。だが、その後、12月に国会が閉会しても以前のようには捜査は再開されず、佐藤氏は疑問を抱く。

「終わり方が異常。今まで殺し(の捜査)を100件近くやっているけど、こんな終わり方はない。自然消滅した、みたいな。実際の約束は、国会が終わったらまた再開すると。だから12月も(Y氏の話を聞くために)宮崎に行っていた。ところが、何も始まる様子もないし、遺族に対して『こういう理由で終わります』と伝える『締め』がなかった」

X子さんが木原氏の妻ということが影響したから、異常な形で捜査は事実上終了したのだろうか。佐藤氏はこう打ち明けた。

「一般人だから差別するわけじゃないが、(政治家の家族が捜査対象だと)ハードルが上がるっていうのは、やっぱりある。同じようには扱えない。やっぱり上の方だって気は遣うと思うんですよね」

7月20日、司法記者クラブで会見した種雄さんの父
7月20日、司法記者クラブで会見した種雄さんの父

「捜査を始めているわけだから、結末をつけなきゃいけない。白か黒か灰色か。途中で終わっちゃったから、そこまでいっていないんです」