非常階段のあたりに若い男性が立っていた
通報から約10分後の同30分ごろ、包丁を持った20代の男が同署に出頭、「彼女が家から出てくるところを待ち伏せして刺した」などと供述したため同署は殺人容疑で男を逮捕した。男は同区本町通、伊藤龍稀(いとう・はるき)容疑者(22)。
2人の交際を巡っては、2年近く前から「けんかになっている」などの相談が同署に寄せられており、同署は交際トラブルが犯行につながったとみて動機などを詳しく追及している。冨永さんは芸能事務所に所属し、小学生や中学生時代には舞台公演などの経験もある元子役女優だった。
現場はJR鶴見駅の西約1キロの住宅街の一角。冨永さん宅は同マンションの2階で、伊藤容疑者は容易に冨永さんが玄関から出るのを確認できたとみられる。4階に住む住民女性が事件発生直前の様子を振り返る。
「朝8時半ごろに犬の散歩から戻ったのですが、その際に2階の冨永さんの部屋のすぐ横にある非常階段のあたりに、若い男性が立っていました。横を通り抜けるときに犬がクンクンと匂いを嗅いだので『すみません』と声をかけると『大丈夫ですよ』と明るい感じで返事をしてくれました。しかし、早朝に住民でもない人がそんなところにいたことには、かなりの違和感を覚えました。今までそんなことは一度もなかったので」
住民が見た男は上下茶色の服装で、小さなショルダーバッグを腹の前で抱えるようにして、壁に寄りかかっていたという。
事件はマンション1階に近い地上の駐車場とみられるが、犯行時に大きな物音はしなかったという。1階に住む女性はこう落胆した。
「事件が起きただろう時間帯には部屋にいましたが、叫び声などはしませんでした。被害者の女の子は顔を合わせればあいさつしてくれる、ハキハキとした可愛い子で、『女優を目指しています』と言っていたんですが……」
逮捕された伊藤容疑者は飲食店の従業員だったとみられる。社会部記者が語る。
「知り合った経緯はまだわかりませんが、2人の交際を巡っては少なくとも4回は警察沙汰になっており、鶴見署が伊藤容疑者をストーカーとして警戒していたのは間違いないでしょう。最初は一昨年の10月ごろ、続いて昨年は夏と冬の2回、直近は今月に入ってからで、いずれも冨永さん本人や関係者からの通報で同署がマンションなど現場に駆けつけ、対応しています。男は興奮すると馬乗りになって冨永さんを殴りつけたこともあるといい、県警は対応に不備がなかったなどを含めて確認を急いでいます」