前編はこちら

妻を動かすために主人がとった行動とは?

――お店に着くと、まず目に入ってくるのが大きなのれんです。のれんに書かれている「山太郎」の頭文字の「や」がとても印象的ですが、そもそも山太郎という店名の由来とは?

樋山潤さん(以下、潤さん) 息子の「一太郎」から「太郎」を取って、「山」という字の形がおにぎりに似ているし、山登りといえばおにぎりを食べる。それに、おにぎりの三角形を山型とも言うし、私たちは樋山で山が入っている。なんというか、山の字には親和性がかなりあると思ってつけました。
ちょっとダサくて親しみもあるところが気に入っています。

山太郎を切り盛りする樋山さんご夫婦
山太郎を切り盛りする樋山さんご夫婦
すべての画像を見る

――おふたりとも経験ゼロで飲食店経営の世界へ飛び込んだと聞きました。ぼんごに入る前は、どのような仕事を?

潤さん 一般企業で経理や人事の仕事をしていました。山太郎でも経営部分を担当しています。
妻はビールメーカーで飲食店への営業や商品開発などを担当しておりましたが、出産を機に退職して専業主婦になっていました。

まったくの畑違いの世界ですが、もともとお互い食べるのが大好きで、自分たちもいつかは飲食店をやってみたいという思いが以前からありました。それに実は私、会社員の前はお笑い芸人をやっていたんですよ(笑)。人を喜ばせるのが好きだから、人と触れ合える仕事の方が向いているなって。

とん汁は山太郎の看板メニュー
とん汁は山太郎の看板メニュー

――おにぎりととん汁のお店にした理由を教えてください。

いろんなお店を回りながら、自分たちでやるなら一番好きな食べ物にしようと。
妻は『死ぬ前に食べるなら絶対おにぎりととん汁』とずっと言い続けるくらい好きでしたから、それに決めたんです。
もともと結婚する前から、それぞれぼんごさんには通っていましたし、おにぎりならぼんごさんしかないという共通の気持ちもあった。
妻を動かすためにも、僕は半年後に退職しますって会社に話して退路を断ったうえで、ぼんごの女将さんに弟子入りを頼みました。