今のNSC生徒は仲良く青春を謳歌している

——たとえば大学などでは「真面目な生徒が増えた」と言われていますが、NSCではどうでしょう?

真面目でいい子たちばかりですよ。それにみんな仲良しで、同好会のような、青春を謳歌している雰囲気がありますね。これは昔と決定的に違います。かつての生徒たちは、まわりを睨みつけるような血の気の多い子もけっこういて、とにかく芸人になって売れてやるんだ、という野心がギラギラしていました。今の生徒たちは、基本的にはみんなで和気あいあい楽しそうにやっています。

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——楽しくやるのはいいことだと思っていいのでしょうか。

これまで僕はずっと、生徒たちには常に「楽しめ」と言ってきたんです。どんなに苦しいことやきついことがあっても、無理矢理でもいいから「楽しめ」と。楽しくなかったら絶対に続きませんから。でも、最初からあんなに楽しそうにしているのを見ると、逆に、これから芸人という一般の世界とは違う厳しい道に進む覚悟が本当にあるのかな、というのは感じてしまいますね。明らかにここ5年で緊張感はだいぶ減ってきたように思います。

——いまやプロの芸人志望ではない人が大学のお笑いサークルで漫才やコントをしているように、NSCでも「思い出づくり」みたいな側面があるのでは。

それはあるでしょうね。M-1グランプリのエントリー数を見ても、2001年の第1回では1603組だったのが、2022年は7261組というものすごい数になっています。これはプロの芸人の数が増えただけではなく、一般の人の思い出づくりだったり、趣味で漫才をやる人が増えたからでしょう。

人前で漫才をすることが「かっこいい」というふうに思われてるんでしょうね。昔は「芸人になる」なんて言ったら、親御さんは大反対するのが当たり前でしたけど、今では普通に応援されますからね。