学校で採れた野菜を販売したら大成功!
図書館で見つけた不思議な『教科書』に導かれ、ヒロトは「経営」に興味を持つようになる。
ある日、学校で収穫した野菜を各自持ち帰るように先生に言われるが、積極的に持ち帰ろうとしないクラスメイトたち。みかねた主人公のヒロトと、頼れる学級委員であり、実家が青果店を営むリンが、リンのお店で野菜を売ることを発案する。
販売価格を決める際のヒントは、『教科書』の「需要と供給」の箇所にあった。ビジネスでは価格が大事で、価格の決め方は三通りあると。
〈もっとも簡単なのは、製品・サービスの材料費に自分が欲しい利益を乗っける方法だ。次に考えないといけないのはお客さんが「いくらまでなら支払ってもいい」と考えているかだ。大多数のお客さんが考えている値段よりも高い値段をつけてしまうと、どんなにいい製品、サービスでも売れなくなる。最後に、ライバルがいくらで打っているのかも参考にする必要がある。〉
そしてリンのお母さんの許可を得て販売したところ、結果はなんと、完売!その結果に驚く二人だった。
リン、一緒にビジネスをやらない?
「あっという間だったね」
「......これ、全部でいくらあるのかな?」
リンがヒロトのほうを見た。
「てかさっ、これだけあれば、中古のカメラくらいなら買えちゃうかもっ!」
「......だめ、これはみんなのお金だから」
「いやあ、そりゃ、もちろんわかってるけどさ」
そう言い訳して、ヒロトがさらにつぶやいた。
「これも『教科書』のおかげだ」
「......教科書って?」
「えっとね、実は、お店やろうってのも、この『教科書』を読んでたから、できるかもって」
ヒロトは『みんなの経営の教科書』を取りだした。リンがその『教科書』をのぞきこんでいる。ヒロトが、ねえっ、とリンに呼び掛けた。
「ビジネス、悪くないもんでしょ?」
そうはいってみたが、ヒロトだって、『教科書』と出会わなければ、自分でビジネスをやってみるなんて思いもしなかった。リンに偉そうなことはいえない。
「......うん、野菜がちゃんと買ってもらえて、お客さんにありがとうって言ってもらえて」
「ね? これはサギとかズルじゃないんだよ。自販機のときだって、みんな、冷たい飲み物が安く買えるからって喜んでもらえたんだ」
ヒロトが笑った。
「もちろん、それでお小遣いだって増えたら、もっとうれしいけどね、はは」
みると、リンがすこしだけ頰を赤らめている。
「......ヒロト、昨日はごめんね」
「いやあ、そんな」
二人とも笑顔だ。ヒロトは、そうだ、今なら、と思った。『教科書』を読んでいて考えたことをリンに伝えてみたら......。
そう、リンとならもっと面白いことができるかもしれない。ぼくの力なんてたかが知れているけれど、リンと一緒なら、きっと。レジをさばくリンを見て、ヒロトはそう感じたのだ。
「てかさ、ちょっとぼくに考えがあるんだけど、リン、ぼくといっしょに『株式会社』を作らない?」