圧倒的かつ精細な表現力で描かれたもうひとつの『神々の山嶺』は、原作小説同様に大きな賞賛を浴びた。 その後、『神々の山嶺』は実写映画やフランス製アニメにもなり、今もなお、世界中の多くのファンに支持され続けていることはご存じの通り。ほかにも数々の作品でコンビを組んだ盟友との知られざるエピソードや、名作の誕生秘話を夢枕獏さんが熱く語った。その模様をお届けする。
本日は「描くひと 谷口ジロー展」の会場となっております、こちら北九州市漫画ミュージアムのイベント会場をのぞかせていただきましたが、面白かったですね。
僕ね、SFを除けば小説より漫画の方が好きで、最近は読んでる量は漫画の方が多いんですよ。この頃、小説はなかなか読まなくなって。
小説で未だに読んでいるのは、これは同じ作品を何度もという意味なんですが司馬遼太郎さんですとか、資料としての古典であるとか、過去に読みたかったけれども機会のなかった作品を読むようなケースが多くて、現代作家の小説はあまり読まなくなってしまったんですね。それらを読む機会というのは「これは面白そう」と感じた時と、あとは僕、小説の賞の選考委員をやっておりますので、その時に候補作を読む。これがほぼ現代の小説を読む少ない機会となっています。
現代作家の小説は年間10冊くらい読むかどうかというところなんですが、漫画はバリバリ現役ですよ(笑)。
谷口ジローさんのことでお話ししますと、まずは『青の戦士(ブルー・ファイター)』(1980年〜1981年)。谷口ジローさんと僕が知り合ったきっかけは、僕が『青の戦士』を手にしたことが始まりで、そのご縁で後に『餓狼伝』を漫画化することになりました。このタイトルは、ブル(オス牛)ファイターをもじってブルー(青)のファイターとしてるんですけどね。
物語が始まり、もうちょっとのところでコレ(※1)ですよ。こうした表現は絵柄も含めて当時なかなかなかったんです。
ところで、この絵(※2)すごいでしょう。イメージの演出としてジャズマンが音楽を奏でているんですが、戦いの場面で音楽の演奏シーンをいきなり突っ込んでくるなんて、谷口ジローさんがここで初めてやったんじゃないかと思うんですよ。
僕が知らないだけかもしれませんが、多分それまで誰もやったことがない表現型式だと思っています。