人間関係に悩んで大学を中退

成績もよく、公立の進学校である須坂高校に進み、山岳部に所属した。このころから政憲容疑者はどんどん内向的になっていったという。
親戚筋の男性はこう証言する。

「政憲は農業が好きで、地元の高校を卒業した後は東京の私立大学で農業を学んでいたんだけど、人間関係に悩んで中退して帰ってきたんだよね。むこうで精神を病んだというウワサもあったな。こっちに戻ってきても人付き合いが悪いのは相変わらずで、消防団や祭りの寄り合いなどには一切顔を出さないし、友達と外食したり飲みに行ったりというのも聞いたことがない」

射撃場に通っていた政憲容疑者(知人提供)
射撃場に通っていた政憲容疑者(知人提供)

両親に大切に育てられてきた本家の跡取り息子は、実家を離れて東京の大学に進んだが、一皮剥けることなく舞い戻ってきた。

そこで、見かねた正道氏は息子に農家をやらせようと、母は「マサノリ園」と名付けた果樹園やジェラート店を切り盛りした。当時、政憲容疑者は母親が経営するジェラート店の店長でもあったが、そこでは母親A子さんの過保護ぶりが目立ったという。

卒業文集に書かれた政憲容疑者の将来の夢(知人提供)
卒業文集に書かれた政憲容疑者の将来の夢(知人提供)

「A子さんはやり手で、政憲のことを溺愛していた。そもそもジェラート屋を始めたのも、ブドウ栽培をはじめた息子を助けるため。店長というのも名ばかりで、A子さんが接客しているのを横目に、ボーっと突っ立てるだけだったし。政憲は根っから大人しいけど、悪くいえば一般常識に欠けているとこがあったわな。お客さんがきてもロクに挨拶もできねえんだ」(同)

周囲からは家族の深い愛情によって育てられたように見られていた政憲容疑者だったが、人知れず深い孤独を抱えていたのかもしれない。農業好きの、大人しい青年は、やがて日本中を震撼させる事件を起こした――。