人間ドックを制した者が、
人生後半の健康生活を制す

まず、「人間ドック」とはそもそも何なのでしょうか?
少し、人間ドックの歴史についてひも解いてみましょう。

そもそも、意外に知られていない事実ですが、人間ドックが誕生したのは世界のその他のどの国でもなく、日本です。

実は人間ドックとは「日本独自の文化」なのです。遡ることおよそ70年、1954年7月12日、国立東京第一病院(現在の国立国際医療研究センター)で行われたのが、初の大規模な人間ドックの始まりと言われていて、その後聖路加国際病院など、全国に人間ドックの文化が広まっていきました。ちなみに、人間ドックの「ドック」とは一体なんなのだろう?と一度は疑問に思ったことがある方もいると思います。

これには諸説あるのですが、船を修理・点検するという意味のdockが語源とされています。船が海を長期間航海した後、故障している部分や、修理が必要なところがないか点検作業を行うように、人間も日々の業務や家事・育児に忙殺される中で、定期的に点検が必要である、という言葉に起因して人間ドックと呼ばれているようです。

戦前にとある政治家が自分自身の健康チェックを東大病院で行った時、たとえで言ったのが始まりだとか、諸説あります。

何故プラスチックゴミが海に流失するのか。では埋めればいいのか?焼却すればいいのか? 廃プラスチックのもっとも「サステナブル」な処分方法とは_1
写真/shutterstock
すべての画像を見る

しかし、そもそもなぜこのような人間ドックの取り組みが行われるようになったのでしょうか?日本では、大正から昭和初期にかけて、最も多かった死因は「結核」という感染症でした。

当時は不治の病として人々に恐れられていた結核ですが、BCG接種や治療法の発見によって、死者は大幅に減少していきました。

そして、その結果として、死因のトップは感染症から現代にもつながる三大死因(脳卒中・心臓病・がん〔悪性新生物〕)に置き換わっていったのです。

結核をはじめとした感染症に関して言えば、満足な治療法がない状態でいくら普段の健康管理をしても大きな意味は持たなかったのですが、現代の三大死因に関して言えば、逆に普段の生活・健康状態が直結してくる病気ばかりです。

この結果として、人々が自身の生活習慣や、がんの早期発見が生命に直結するという実感をより感じやすくなったのです。

こうした流れで人間ドックが始まりました。

繰り返しになりますが、感染症に対しては我々の体をいくら調べても、かかってしまってはどうしようもないもので、半ば諦観の念もあったところ、感染症の治療薬が開発され状況が変化しました。代わって脳卒中や心臓病などある程度自分自身の普段の行動を変えることで「防げる」病気や、がんのように「早期発見することで治療ができる」病気の恐怖が顕在化し、日本人の健康意識が高まったタイミングで生まれたのが人間ドックなのです。