罪と罰の行き着く先
ドキュメンタリー番組でテレビ画面に映るのは、取材と編集の一つの結果に過ぎない。番組が一つの物語であるとしたら、「放送には100分の1しか出せなかった」と思えるほどに、その取材過程もまた物語に満ちている。けれどその過程が詳らかにされることは少ない。
でももし、私たちが取材活動のリアルな一面を物語ることができれば、結果として私たちが目撃した現場を、そして問題提起したかった内実を、より深く理解してもらえるのではないか。
そんな思いから本書では、単にテレビ番組の内容を再編集するのではなく、取材者自身の物語として再構成し、番組を見ていない人にも読んでもらえる取材記を目指した。新しいエピソードも多く加えているので、番組を見た人の目にも新鮮に映ると思う。
なお、取材記は2人の記者の視点で交互に描くことにした。取材というのは本当に偶然に満ちていて、時にその現実は一人では捉えきれないからだ。取材中、様々な偶然が重なり合ったとき、私たちにはまるで「奇跡」でも起きたかのように感じられたのだった。
一方で、この取材は順風満帆な成功物語どころか、失敗や挫折の連続でもある。そうした取材者それぞれの感情の揺れを、読者のみなさんに感じ取ってもらえたら嬉しい。
そして、日本の刑罰制度や刑務所の運用が岐路に立たされている、今このときに、「日本一長く服役した男」の生涯と、その罪と罰の行き着く先を一緒に見届けてほしいと思う。
これはその取材班の、全記録である。













