見逃されがちな「高齢者のうつ病」

発見されづらいという点で、認知症よりも気を付けてほしいのが「うつ病」です。

高齢になると気力をなくして、何もかもやる気が起こらない……という状況に陥る方もいらっしゃいます。

こうした現象が起きても、「歳を取ったから仕方ない」と受け入れがちなのですが、調べてみると実は老人性のうつ病を患っていたというケースも少なくありません。

そもそもうつ病は自分がかかっていることに気が付きづらい病気です。それゆえ、うつ病の人が実際に医療機関へ受診するケースはわずか30%程度だと言われています。残り70%の人々は、自分の病気を単なる不調だととらえて、医療機関に頼らずに苦しい日々を送っています。

だから、少しでも異常を感じたら、早めに精神科に行ってほしいと思います。

高齢者のうつ病は、「気持ちが落ち込む」「やる気が出ない」などという一般的に知られた症状だけではなく、頭痛やめまい、吐き気、腹痛、耳鳴り、体のしびれといった身体的な症状が起こることもあります。

その結果、「どこか体調が悪いのだろうか」と内科や外科などを受診するものの、特に異常が見当たらず、加齢のせいだと見なされて放置され、症状が悪化することもあります。

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うつ症状は一度悪化すると完治に時間がかかってしまうので、できるだけ早い段階で対処することが大切です。早期発見できれば、その分、完治も早くなります。

特に高齢者がうつ病になりやすいのが、自分の「老化」を必要以上に気にしすぎること。

たとえば、「最近、何かと昔のことが思い出せない」と物忘ればかり気にしていると、前頭葉の老化が加速しますし、「認知症だったらどうしよう」という不安が強くなることで、意欲がよけいに低下してしまうこともあります。そうこうするうちに、うつ病を発症してしまうのです。

なお、軽度の老人性うつ病の場合は、適切な薬を飲めば症状はすぐに回復していきます。

「なんだか最近やる気がない」
「欲しいものがない」
「よく眠れない」
「夜中に何回も目が覚める」
「妙にイライラする」
「食欲が以前に比べて減ってしまった」

などの症状が2週間以上続いている方は、うつ病かうつ病に近い状態に陥っている可能性があります。「おかしいな」と思ったら、ぜひ一度精神科を受診してみてください。

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『90歳の幸福論』(扶桑社新書)
和田秀樹
2023/3/1
968円
192ページ
ISBN:978-4594093891
50万部超の大ベストセラー『80歳の壁』著者の最新作!
92歳の母を持つ高齢者医療の医師がいまいちばん伝えたいこと
「壁」の先にある人生最後の“ごほうび”の時間!
【健康】【お金】【生活習慣】【介護】
人生100年時代、気楽に「老い」を楽しむコツ
(目次)
▼第1章 幸せなお年寄りの条件
・年寄りが不幸だなんて、誰が言った  
・認知症への大きな誤解とは?  
・老いれば見栄や嫉妬から解放される!  
・「高齢者になるのは怖い」という誤解が広まったワケ  
・老いは人と比べられない  
・要介護を避けたければ「フレイルサイクル」に陥るな  
・高齢者に大切なのは「これがしたい」という意欲 
・前頭葉を刺激し続けて活性化させよう!  
・老後こそ脳や体に刺激を与えるべき  
・愛されるお年寄りと愛されないお年寄りの壁  
・常識に囚われすぎると窮屈な老後に  
・完璧主義だと老け込みやすくなる……

▼第2章 他人や道具を頼って第2の人生を楽しむ!
・日本の高齢者は他人に頼らなさすぎる!  
・道具で行動のハードルを下げよう  
・補聴器で認知症の入り口を遠ざける  
・「年寄り扱いされたくない」が一生のケガに……  
・2回骨折しても歩ける92歳の母  
・高齢者こそ情報発信をしてほしい!  
・「人の力を借りる」ことが「老い」の解決策  
・ 助けてもらう下地をつくっておく 
・「一足先にお世話になるね」の精神  
・デイサービスも徹底的に利用しよう
・なぜ家族に介護をさせないほうがいいのか?  
・「できること」を喜ぶ  

▼第3章 医者を信じすぎず健康な高齢者に
・医者の言葉を信じる必要はない!
・「個人差」が無視される現代医学  
・欧米の健康法をそのまま導入する日本の医師  
・健康診断の数値は信じなくていい  
・なぜ医者はたくさんの薬を処方するのか?  
・人によって薬の適正量は違う  
・90 代は認知症が多数派
・「認知症=人生の終わり」ではない  
・「きんさんぎんさん」のように幸せなお年寄りに  
・見逃されがちな「高齢者のうつ病」  
・「がん」は誰にでも起こりえる  
・実験台が嫌なら大学病院に行くな  
・自分が生きてきた人生を信じよう!  

▼第4章 老後のお金を心配しすぎていませんか?
・歳を重ねるほどお金はいらなくなる  
・元気なうちにお金を使いまくろう!  
・「終活」をおすすめしない理由とは?  
・子どもに財産を残してもケンカになるだけ  
・「自分は役に立たない」と思わなくていい  
・消費する高齢者こそ、日本経済を救う  
・介護に必要な金額とは?  
・介護保険は申請が必要  
・「老人ホームに入れないのでは」と心配する必要はない  
・収入があっても生活保護は受給できる  
・生活保護は恥ずかしくない!
・理想的だった祖母の葬式
・本当の終活とは?  
・可能な限り、働くという選択肢もある 

▼第5章 “ごほうび”の時間を最大限満喫する生活習慣
・高齢者こそ栄養価が高いものを食べるべき  
・コレステロール値を上げるべき医学的な理由  
・「自炊しなければいけない」に縛られるな  
・「脳トレ」よりもアウトプット!  
・日の光でセロトニンを増やす  
・カラオケで幸せな老後をつくる  
・メモの習慣で認知症を予防  
・若い異性との接点をつくろう  
・「若づくり」はできるだけしたほうがいい  
・毎日の変化が老化を防ぐ第一歩  
・「笑顔」と「謙虚さ」で愛されるお年寄りに  
・「都合のよいお年寄り」にならない!  

60歳以上の高齢者や90代の親を持つ人は必読!
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