「きんさんぎんさん」のように幸せなお年寄りに

認知症は悪いものという印象がありますが、それはあくまで外部からの見方にすぎません。繰り返しになりますが、私自身、認知症は長くこの世を頑張って生きた人への〝ごほうび〞なのではないかと思うこともあるほどです。

たとえば、幸せそうなお年寄りとして有名なのは、かつて100歳の双子の姉妹として知られた、「きんさんぎんさん」でしょう。きんさんとぎんさんは、いつもニコニコとして、とても穏やかです。あの柔和な笑顔を見て、「自分もこんなお年寄りになりたいものだ」と思った人もいるでしょう。

100歳まで生きていた上、彼女たちの話を聞くかぎり、きんさんぎんさんもおそらくなんらかの認知症の症状は出ていたはずです。あのように幸せそうだったのは、過去の辛いことをある程度忘れ、しがらみからも解放され、穏やかな心を保ち続けることができたからではないかと思います。

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きんさんぎんさんのような穏やかなお年寄りになりたいと思う方に、ぜひ心がけていただきたいのは、日頃から「笑顔」や「明るさ」を保つことです。

認知症になると、昔の性格が強く出てくることが多いものです。明るかった人はより明るく。笑顔が多かった人はより笑顔が多く。そして、怒りっぽい人はどんどん怒りっぽくなるし、ひがみっぽい人はますますひがみっぽくなってしまうのです。

認知症になってからでは、なかなかこの性質を変えることはできません。だからこそ、いまから考え方を変える必要があるのです。

幸せなお年寄りになるために、日頃から幸せな態度を心がける。細かいことは気にしない。自分がしたいことには素直になる。他人の親切には感謝する。多少何か物忘れがあって、他人に指摘されても、「なんだ、そうだったか」と笑い飛ばせる心構えこそが、実は一番大切な対策だといえるでしょう。

そんな毎日の積み重ねがあれば、認知症になっても、ずっとニコニコと幸せなお年寄りでいられるはずです。