軽視される「ケア」…人がこんなに大事にされていないことに危機感

何より、教育という国家の基盤を作る領域において、人がこんなに大事にされていないことに危機感を覚える。教員に限らず、保育士や介護士、看護師など、人手不足になっている領域に共通しているのが、「ケア」の仕事という点である。対価が支払われない家事や子育て、介護などの「アンペイドワーク」を含め、ケアを受けない者はいない。にもかかわらず、ケア活動もケア活動を担う人々も、あまりに軽視されすぎている。

仕事の機械化が進み省人化される一方、人間にしかできない仕事である「ケア」の社会的位置付けを見直すべき時期に来ていると感じる。それが結果的に、教員不足の解消や少子化対策の強化にもつながるのではないだろうか。

教師は、教師になった人の人生を踏みにじる仕事…なぜ教員志望は減少しているのか「人がこんなに大事にされていないことに危機感」_4

最後に、「教員志望をやめた」学生の声を紹介したい。「教員を目指すためには趣味や学業以外の学習の時間、また研究の時間を4年間も犠牲にしなければならない。その対価として得られるのは安い賃金と重い責任。国家において非常に重要な教育という領域においてやりがい搾取と言わざるを得ない実情。(大学生・4年)」

「労働環境、待遇の改善が見通せず、自分自身を殺すことに繋がりかねない。(大学生・4年)」

この状況を放置していては、「先生がいなくなる」日はそう遠くない。

#1『教師を自死にまで追い込む「命令なき超過勤務の強要」…先生”定額働かせ放題”の奴隷制度に「死にたい」の声』はこちらから

#2『「金や時間に関係なく子どもに尽くすべき」定額使い放題制の教師に強いる崇高な聖職者像…出退管理すらしない学校のヤバさ』はこちらから

#3『定時を超えた業務は「自発的行為」…もはや地獄のブラック教育現場と、全てを教師に丸投げした国・自治体・学者の大罪』はこちらから

#4『残念すぎる先生…働き方改革意識ゼロのブラック教育現場「そもそも時間・コスト管理していないから実態わからない」の末路』はこちらから

『先生がいなくなる』 (PHP新書)
内田 良、小室淑恵、田川拓麿、西村 祐二 
2023/5/16
1,078円
208ページ
ISBN:978-4569853468
◆教員不足の原因は、長時間労働を生み出す「給特法」にある!
◇教育現場を残業地獄から救う方策を各専門家が徹底議論!


近年、「教員不足」が加速している。
小学校教員採用試験の倍率は過去最低を更新し続けており、倍率が1倍台、「定員割れ」の地域も出始めている。

その原因は、ブラック職場と指摘される「教師の長時間労働」、そして、教師の長時間労働を生み出す「給特法」という法律にある。
給特法の下では教師はいくら働いても「4%の固定残業代」しか得られず、そのために「定額働かせ放題」とも揶揄されている。

この状況を一刻も早く改善するため、
現役教諭、大学教授、学校コンサルタントら専門家が、「給特法」の問題点の指摘および改善策を提案。
教育現場を残業地獄から救うための方策を考える。
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