時間管理をしないから実態をつかめず、長時間労働が放置される
学校の教員における出退勤の管理は長らく、出勤簿に印鑑を押すだけであったり、管理職が目視等で確認するだけであったりと、実質的には正確な時刻を管理できるものではまったくなかった。
2016年の「教員勤務実態調査」によると小学校ならびに中学校において、タイムカードやICT機器を活用して出勤や退勤の時刻を記録している学校は、全体の2割台にとどまっている(図2-2)。タイムレコーダー等による客観的な時間管理が当然とされている民間企業の労働者にとっては、あの長時間労働が常態化している学校で、それを把握する手立てが用意されてこなかったことは、大きな驚きであろう。
これまで学校の教育活動は、「時間管理なき長時間労働」によって支えられてきた。言葉を補うならば、時間管理しないから長時間化すると言える。時間数が把握されないがために、勤務の実態が可視化されず、それゆえに勤務時間数を抑制するための数値目標が立つこともない。実態がわからないままに、長時間労働が放置される。
教員の働き方をひと言で表すならば、「時間管理なき長時間労働」と表現できる。時間管理がなければ、どれだけ長時間働いているのかわからない。残業を何時間までに抑制すべきかの目標も立てられない。「時間管理なき」には、事実として時間管理がなされていないとの意味以上に、時間管理がないからこそ長時間労働に至ってしまうとの意味を込めている。
時間管理なき長時間労働が生み出された背景の一つに、「給特法」がある。公立校の教員に適用される法律で、正式名称は「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」である。