ネット上に溢れる悲鳴「3年勤めて精神疾患になりました。土日休めない」

「まだ中学校教員になって3週間も経ってないけど、正直この1年で辞めようかなって思ってる。理由は部活動。学級経営で頭がいっぱいで教材研究もろくに出来てないのに、放課後休日は部活動って意味わからん」

「3年勤めて精神疾患になりました。土日休めない。毎日残業。毎月90時間近くの時間外労働。死にたいってずっと思ってた。労働環境の改善こそが、これからの先生たちに届けたい本当のバトンです」

(「『子どもたち、ごめんね』〝#教師のバトン〟は、いまどこに?」NHK WEB特集 2021年4月30日)

教師の労働問題に対する社会的関心は、インターネット上の匿名空間(ツイッター)に教師たちが右記のような「悲鳴」を書き込み始めたことから高まったと言われている。教師たちが「ネット上」に「匿名」で発信する理由は、職員室は今なお保守的であり、「残業が辛い」という類の発言は学校内では憚はばかられるからである。

こうした発信はしばしばメディアに取り上げられ、この数年、教師の働き方がより多くの人の目に留まるようになった。「先生の働き方は過酷」という世論を作ったのは、紛れもなく、ネット上に溢あふれる名もなき発信者たちの「声」であった。

教師を自死にまで追い込む「命令なき超過勤務の強要」…先生”定額働かせ放題”の奴隷制度に「死にたい」の声_3

「#教師のバトン」を付け、いかに教育現場が過酷な状況にあるかを「直訴」

教職を志す学生たちにとっても、将来就く職場の実情を知るにはツイッターを眺めるのが一番である。若者たちがこぞってこうした発信を見るようになった結果、「教育現場はブラック職場」という認識が大学生にも浸透するようになった。少なくない大学生や高校生は憧れの教職の道を断念するようになり、そうしたことも相まって「教員不足」の現状が静かに作られてきた。

2021年度に実施された小学校教員採用試験の平均倍率は2.5倍で、過去最低を更新(文部科学省発表)。このままでは、先生のなり手がますますいなくなる。

そんな中、ツイッター等に現場教師から「学校のちょっとイイ話」を発信してもらえたらトレンドも変わるのではと考えた文部科学省は、2021年3月26日に「#教師のバトン」というハッシュタグを付けたSNS投稿を呼びかけた(ハッシュタグとは、発信がより多くの人の目に触れるよう、SNS投稿の際に付けられる閲覧・検索ワードのこと)。結果は、推して知るべしであった。

発信者たちはこぞって「#教師のバトン」を付け、いかに教育現場が過酷な状況にあるかを「直訴」し続けた。上記のNHKの報道によると、文科省が呼びかけてから1か月間に、リツイートを含めた投稿数は22万5000件以上(含めないものは4万1000件余り)。その多くは現状をネガティブに訴えるものだった。

こうして官製ハッシュタグ「#教師のバトン」は、瞬く間に「大炎上」した。