年末にはSPもつけずに大阪・西成の夜回り
ある年末にはSPもつけずに大阪のかつての釜ヶ崎、現在の西成地区の夜回りをしに行った。学校の先輩と一緒だったという。
「主人は、わたしにあんまり大暴れしてもらっても困ると思っているみたいですね。『よく考えて』とは言っています」
昭恵はそう言っていたが、この行動を、安倍は心配しながらも見守り、また新しい自分の糧にもしていたのだろう。
昭恵が自身の店「UZU」を会員制にしなかった理由
昭恵は安倍の最初の総理時代に、福岡にある「知心学舎」を見学したことがある。不登校やニートの人たちが合宿生活をしながら更正する施設で、ここでは道徳と政治を中心命題としている儒学思想の『大学』を読んでいた。
ただ声を出して読むだけなのだが、それだけで子供達が変わっていき、社会に戻っていったケースがいくつもあるという。言葉が体の中に沁み込んでいき、子ども達は段々と変わっていくそうだ。ちなみに年齢に関係なく効果があり、昭恵もそれに参加し、大きい声で読むと、なんとなく背筋が伸びるような感じがした。
先生である安松鈴代が、こことは別に四書五経、論語を素読する「鈴蘭会」を設けており、昭恵に「協力してください」と言う。行動力の塊である昭恵は名誉会長という形で参加するようになった。
ここで思いついたのが、自身が経営する居酒屋「UZU」の二階スペースを利用することだった。近所の人や子どもたちに声をかけ、近所の小学校にビラを配らせてもらって……とアイデアもいろいろ出てきた。
「UZU」という店名は、あらゆる人が集って渦を巻く、という意味からだ。だから会員制にせず、誰でも気軽に入れるようにした。開かれた場所にするところは、まさに彼女の性格そのままである。