Vision Proでどんなことができるのか?

Vision Proを着用し、まずはフォトアルバムのアプリを体験した。

iPhoneで撮影した写真が、Appleのクラウドサービス「iCloud」経由でVision Proに同期される。ここで写真を1枚選んで表示させると、自分がいる部屋の中空に、写真が大型ディスプレイよりも大きなサイズで鮮明に表示される。

特に面白いのは、パノラマ撮影をした写真だ。アイスランドで撮影された海の景色を見てみたが、写真を拡大表示させると、自分がそのパノラマ写真の中に入ったように景色が視界いっぱいに広がる。

もっと凄いのが、Vision Proで撮影した写真だ。なんと、Vision Proにはカメラも内蔵されているのだが、このカメラが立体撮影に対応しており、たとえば友人が楽しそうにしている様子を動画で撮影すると、あたかも目の前で本当に楽しそうにしているかのように表示されるのだ。

こうした立体カメラはこれまでにも存在したし、それをVRゴーグルなどの製品で見ることもできたが、Vision Proでは、撮影や写真の管理、そして再生が非常にわかりやすくスマートにまとめられている。

また、まるで映画の中に出てくる回想シーンのように写真の境界線にきれいなボカシ効果がかかっているなど、体験の美しさにもこだわっており、これまでのVRヘッドセットのような“おもちゃっぽさ”を感じさせない。

Apple社は過去には「公式発表→開発中止」したことも。「3000ドル前後で発表間近」と噂されるARヘッドセット「Apple Glass」は、本当に発売されるのか?_2
Vision Proでパノラマ写真を表示すると、視界いっぱいに風景が広がる(写真/apple.com)

ミュージシャンが部屋の中で、自分のためだけにミニライブをしているような映像も体験した。その時点で立体的な映像にはすでに慣れていたが、その音響に驚いた。声はしっかりとボーカリストのほうから聞こえてくるし、ピアノの音はピアノから、バックコーラスの声は部屋の右に隠れていたバックボーカルの女性たちが立っている位置から聞こえてきた。

これは、Appleが近年力を入れている「空間オーディオ」という立体音響技術と、Vision Proで見える映像で正確な位置調整が行われているからだ。

従来のVRヘッドセットなどでも立体音響を使った映像作品は体験できたが、音にVision Proほどの広がりもないうえ、被写体の位置と音が聞こえてくる方向に多少のズレがあるのが当たり前だった。それでも十分楽しめるが、位置や向きがピタリと合うと、体験の質がかなり変わってくる。

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Vision Proには史上もっとも先進的な空間オーディオシステムが搭載する(写真/apple.com)

Appleはよく、同社が作っているのは「テクノロジーではなく魔法」と語っているが、Vision Proはまさにそれを感じさせる。

最後に見た恐竜の体験も、リアルで迫力があった。

アプリを起動すると、まずはタイトル画面に表示された文字のリアルな影が、壁に投影される。その後、ひらひら待ってきた蝶々が体験者である私の指先に止まる。その蝶々が脚の節目の部分までかなりリアルかつ高精細に描かれている(Vision Proには、左右両方の目のそれぞれに4Kテレビ以上の解像度を持つ小型ディスプレイが用意されている)。その後、恐竜が壁から、私のいる部屋に飛び出してきた。

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壁から飛び出してきた恐竜(写真/apple.com)
Apple社は過去には「公式発表→開発中止」したことも。「3000ドル前後で発表間近」と噂されるARヘッドセット「Apple Glass」は、本当に発売されるのか?_2
Vision Proは、2つの超解像度ディスプレイを備える(写真/apple.com)