未婚化や少子化の要因を人間は社会構造の問題という曖昧な理由では納得できない

私は書籍でも記事でもインタビューでも同じことをずっといい続けているが、未婚化や少子化の要因というものは決して「個人の価値観の問題」などではない。経済環境や職場環境含めた社会構造上の環境問題である。価値観が変わったのだとしたら、まずそれを変えるだけの理由となる環境があったはずで、価値観はその環境に適応したにすぎない。「若者が草食化したから未婚化になった」なんていい草は間違いであるという話は第一章でもご説明した通りである。

しかし、人間は社会構造の問題などという曖昧な理由では納得できない。というより安心できない。特定の誰かのせいにしたがる。だから、自分たちの安心のために、悪者を作り上げてしまう。

古来、コミュニティ内の仲間意識や絆を強化するのに一番効果的なのは、コミュニティの外に敵を作ることである。敵がいるのだから、みんなが一致団結して協力しないといけないという気持ちを喚起できるからである。

ネット記事での「働かないおじさん」「子ども部屋おじさん」ワードの多用…おじさん叩きが死ぬほどバズり、読み手もファクトを気にしない理由_3
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おじさんなら叩いていい、ろくでなしだから叩いてもいい

外に敵がいるうちはいいが、もし適当な敵が外にいなければ、仲間内からでも敵を作りはだし、これをみんなで排除することで新たな仲間意識を確認する。極左集団の内ゲバなどはその好事例だろう。

また、学校などでのいじめなどもこうした原理で発生する。「子ども部屋おじさん」の件でいえば、少子化や未婚化の原因を「子ども部屋おじさん」を悪に仕立て、みんなの敵とし、彼らにその責任を一手に負わせることで安心を得ようとする人たちがいるのだ。

これは何かに似ていると思わないだろうか。そう。中世欧州の汚点ともいうべき「魔女狩り」そのものなのである。

おじさんなら叩いていい、おじさんでも未婚で親からも独立できず、満足に金も稼げないろくでなしだから叩いてもいい、そういう奴等は自分の弱さや甘えでそうなっているんだから叩かれても自己責任なのだ。そういう心理なのである。