「足りない」と思うからイライラし、怒り、
自分は不幸だと思う

人は、何かが足りないと感じた時に不幸を感じる。腹が減った、給料が少ない、他人の評価が低い......などなど、「足りない」と思うからイライラし、怒り、自分は不幸だと思おうとする。

しかし、そうした思考の癖は、常に、恋愛相手がいない、結婚相手がいない、子どもがいない......。そういった自分にない物ばかりに目を向けてしまい、たとえ何かを手に入れても、手に入れた充足感より、「まだこれが足りない」という欠乏しか認識できなくなる。

いわば、永遠の餓鬼と化してしまうのだ。
そもそも、本当に結婚したらしあわせになるのか?
それぞれの年代において、幸福や不幸を感じる割合に、2020年国勢調査による未婚人口を掛け合わせれば、計算上の未既者の年代別の幸福人口と不幸人口が算出できる。

未婚男性の「幸福人口」は20代から年代を重ねるごとに順調に減少しているのに対し、「不幸人口」は20代から50代までそれほど大きな変化はない。これが何を意味するかというと、「幸福な未婚」だけが未婚でなくなっていっているということ。

未婚者が既婚者より幸福度が低いと感じる傾向はなぜおきるのか。「結婚したらしあわせになれる」と思っている人は結婚できない_4
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結婚していく未婚男性は、元から幸福だった者

つまり、結婚していく未婚男性は、元から幸福だった者が多いということだ。

未婚より既婚の方が幸福度が高いのは事実だ。しかし、それは「結婚したから幸福度が上がった」のではなく「幸福度の高い未婚が結婚していく」という因果があると見た方が、納得性は高い。

身も蓋もないいい方をすれば、「結婚したらしあわせになれる」と思っている人は、結婚もできないし、しあわせにもなれないのだろう。

欠乏の心理に支配されて、「あれが足りない、これが足りない」という不幸思考に陥っている人は、まず、現在の自分の「足るを知る」ことが先なのだ。そして、それは、たとえ結婚しようがしまいが、自分の人生をしあわせに生きていく上で大切なことでもある。

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『「居場所がない」人たち: 超ソロ社会における幸福のコミュニティ論 』
(小学館新書)
荒川和久 
2023/3/31
1034円
224ページ
ISBN:978-4098254439
居場所がなくても幸福と思える生き方とは?

2040年には、独身者が5割に。だれも見たことのない、超ソロ社会が到来する。
ますます個人化が進む中、私たちは家族や職場、地域以外に、誰と、どこで、どうつながれば、幸福度を高められるのか?
また、親として、人生の先輩として、これからその時代を生きる子どもたちに何を伝えられるのか?

家族、学校、友人、職場、地域・・・・安心できる所属先としての「居場所」は、年齢を重ねるごとにつくるのが難しくなり、時に私たちは「居場所がない」と嘆く。
また「そこだけは安心」という信念が強すぎるがゆえに、固執し、依存するという弊害も生まれる。

では、居場所がなく、家族や友達をもたず、一緒に食事をする相手がいないのは、「悪」なのだろうか?常に誰かと一緒でなければしあわせではないのだろうか?

社会の個人化も、人口減少も、もはや誰にも止められない。私たちに必要なのは、その環境に適応する思考と行動だ。著者が独身研究を深掘りした先に示すその答え=〔接続する〕関係性、〔出場所〕という概念とは?

結婚していてもしていなくても、家族がいてもいなくても、幸福度を上げるための視点とヒントに満ちた一冊。
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