結婚すればしあわせになれるのか?

既婚の幸福度が未婚より高いのは事実だが、だからといって「結婚すればしあわせになれる」とはいえない。それは、相関と因果をごちゃ混ぜにするようなものである。「幸福度が高いのは既婚男性が多い」という相関はあるが、「結婚したらしあわせになる」という因果があるとまではいえない。

「フォーカシング・イリュージョン」という言葉がある。これは、ノーベル経済学賞の受賞者であり、行動経済学の祖といわれる米国の心理学・行動経済学者ダニエル・カーネマンが提唱した言葉である。

「いい学校に入ればしあわせになれるはず・いい会社に入ればしあわせになれるはず・結婚すればしあわせになれるはず」というように、ある特定の状態に自分が幸福になれるかどうかの分岐点があると信じ込んでしまう人間の偏向性を指す。簡単にいえば、思い込みするから生じる幻想ということだ。

勿論、目標を定めて努力することは大切である。しかし、進学や就職や結婚という状態になれば自動的に幸福が得られるというわけではない。

たとえば、結婚したいという女性は「相手はいないけど、とにかく結婚したい」とよくいう。これこそ結婚という状態に身を置けば、幸福が手に入るはずという間違った思いみである。そうした思い込みのまま、万が一結婚してしまったら、「こんなはずじゃなかった」と後悔しかしないだろう。

未婚者が既婚者より幸福度が低いと感じる傾向はなぜおきるのか。「結婚したらしあわせになれる」と思っている人は結婚できない_3

「結婚すればしあわせになれるんじゃないか」
という淡い期待

結婚すればしあわせになれるという考え方は、裏を返せば、「結婚できなければしあわせになれない」「結婚しないと不幸だ」という決めつけの理屈にとらわれることになる。

それは、結婚という特定の状態に依存してしまって、それ以外の選択肢を否定しているようなものでもある。

要するに、「現在の結婚できない自分の否定」である。むしろそうした思考こそが、婚活女性たちの不幸感を現在進行形でより増幅させているのではないかとさえ思う。

一方、未婚男性の中にも「相手はいないが結婚したい」と婚活にいそしんでいる人もいるだろう。もはや結婚が社会的信用を示す時代でもなく、結婚しなければ出世させないなどという企業も少ないだろう(少ないが、いまだにそういう企業があるということにも驚くのだが)。

それでも結婚したいと熱望する未婚男性もまた、「結婚すればしあわせになれるんじゃないか」という淡い期待を抱いてはいないだろうか。そう思ってしまうのは、「欠乏の心理」があるからである。