脇の遊歩道は外国人専用の路上飲みスポットに
時刻は夜11時をまわった。先ほどよりも人の数は減ってきたが、路上では酔っぱらった外国人グループがビートルズの『ヘイ・ジュード』を熱唱していたり、カップルが周囲を気にせずにキスしたり、なかには缶チューハイを持ったまま入店しようとする者の姿も見られた。
さらに、新宿ゴールデン街の脇にある遊歩道、「四季の路」は外国人専用の路上飲みスポットと化していた。
このようにカオス状態になっている新宿ゴールデン街を、商店街の責任者はどう考えているのか? 新宿三光商店街振興組合の組合長・成瀬昭氏はこう語る。
「新宿ゴールデン街のほとんどは木造の建物でとにかく火災に弱い。事実、2016年には計6棟がほぼ全焼しましたし、去年も火災が起きています。
英語看板で注意喚起をしていますが、自国との文化の違いで、いまだに路上でたばこを吸ってしまう方はいらっしゃいます。
今後も看板の数を増やしたり、チラシを配るなどしてゴールデン街でのマナーを守ってもらえるよう呼びかけたいと考えております」
マナー違反に対しては頭を悩ませる一方で、成瀬氏はこう感謝もする。
「新型コロナウイルスによる『緊急事態宣言』や『まん延防止等重点措置』の影響で、新宿ゴールデン街は深夜営業ができなくなってお客さまが減り、大きな被害を受けました。
ですが、去年10月の規制緩和以降は、外国人観光客のみなさまのおかげで街に活気が戻って、大変に感謝しております」
マナーの悪い外国人観光客に閉口していた前出の40代男性店主ふたりも同意見だ。
「マナーの悪い人が一部いるとはいえ、正直うちとしては助かってます。
ゴールデン街はオーナーが高齢で店を畳んだり客離れが起きたりで、かなりさびれていたんです。
そんな状況を変えてくれたのが外国人観光客。彼らは平日も土日も関係なくお金を落としてくれる。今日までゴールデン街が存続できたのは、間違いなく彼らのおかげでしょう」
「今のゴールデン街は平日だと外国人頼みのところが大きい。
それに翻訳機を使って『日本でおすすめの旅行先はありますか?』とか『桜がとてもきれいでした』とうれしそうに話しかけてくれる人もいる。そういう国際交流はウェルカムですよ」
外国人も日本人もともに肩を並べて、気持ちよくしっとりと飲める日がくるのか。もしそうなれば、新宿ゴールデン街特有の“横のつながり”は世界を股にかけるようになるはずだ。
取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班