「家族の絆」よりもっと大きい「人」とのつながりを大切に
──『宇宙人のあいつ』は、家族を描いた物語ですが、この映画に出演し、中村さんの中で家族に対する思いに変化は?
この映画は「家族の絆」がキーワードになっていますが、僕はもっと拡大解釈していて、「人」を感じたんです。それは脚本を読んだときから感じていたことなのですが、家族といっても、それぞれひとりの人間じゃないですか。
親が結婚した年齢とか、母親が自分を産んだ年齢に自分がなってみると、子どもの頃は絶対的に大きな存在だった親の普通さを知るというか。すごい人たちだと思っていたけど、今の自分と変わらないんだなと。家族は大切な存在だけれど、それぞれの人生を歩んでいるひとりの人間なんですよね。
日出男は宇宙人という一歩引いた立ち位置で真田家を見ていたから、余計そう思ったのかもしれませんが、ひとりひとりのつながりが大切だと感じました。
──人とのつながりは人生において欠かせませんからね。
ここ数年コロナ禍で、会いたい人に会えなかったり、寂しい思いをしたりという人がたくさんいたのではないかと。だからこそ、家族に限らず人と人とのつながりが大切だし、この映画を見てくださる方はそこに共感してくれるのではないかと思います。
──中村さんは最近ご結婚されましたが、それによって俳優活動に対する思いや見据える未来に変化はありますか?
いや、ないですね。結婚をしたら親戚が増えて、お付き合いも広がることはあるでしょうし、責任感も増しますが、それと仕事は別です。結婚をしていても、していなくても、面白い作品を作って皆さんに楽しんでもらいたい気持ちは同じですし、全ての物事に対して誠意を持って取り組むことに変わりはありません。
──俳優としての10年後、20年後の自分というのは考えていますか?
なんとなくはあります。これまでもいろいろと考えながら、さまざまなことに挑戦して技術を身につけようとしてきたので、経験値が上がった今はすごく身軽です。何がどうなるのかわからない、アクシデントさえ楽しむターンに入っています。
そのせいか、最近は撮影に行くときは手ぶら。あれこれ準備せず、髭剃りとアイスコーヒーしか持っていきません(笑)。何かが必要になったとき「さて、どうするか」と考えるのが楽しい。
だから将来的なことも、自分が考えている未来に辿り着くことが大切なのではなくて、その都度、プロセスを充実させたいという感じですね。
──さまざまな経験を経て至った考えなのでしょうか?
人生は螺旋階段みたいなものだと考えているんです。俳優に限らず、どの仕事でもそうですが、「こういう悩みは前もあったな」とか、同じことを経験することは誰にでもあると思うんです。
でもそれは100%以前と同じではなく、ちょっとずつ進んでいて、螺旋階段から同じ景色を見ながら、階段を一段ずつ上がっているような感じかなと。そういう意味で、今の自分は、少し上の段に来たんだと思います。
今後、年を重ねると立場も変わっていくし、経験したことのない何かに出会うこともあると思います。その都度、向き合って、対処しながら階段を昇っていく。そんな感じで俳優人生を楽しみたいですね。