おもしろがれなくなったら、もうおしまい
――『プロハンター』から藤さんの出演作を拝見してきました。今日はインタビューさせていただけて大変光栄です。
そうですか、『プロハンター』というと、ずいぶん昔ですね。
――1981年のテレビドラマです。この度公開される主演映画『それいけ!ゲートボールさくら組』(2023)は、「人生には、遅すぎることなんてひとつもない」というメッセージが込められた、シニアの青春物語です。藤さんがこの映画で特に気に入っているのは、どんなところでしょうか?
明るいところですね。コロナ禍では、友人と気楽に会って、ご飯を食べたり騒いだりすることもなかなかできず、お互いに気遣って電話をするくらいで。そんなときにこの映画の話が来て、明るくていい話だなと思いました。
年を重ねてもあんなに社会と関わりが持てるなんて、ちょっと夢物語みたいでいいですよね。なんかうらやましいなと、台本をいただいたときに思いました。
――好きなシーンは?
(山口)果林さんが演じるサクラに告白のようなことをするシーンは、ほっこりしていいですよね。おばあちゃんとおじいちゃんですが、映画の作りとして、あのシーンがあることで、全体が生きてくるんです。
――20代でデビューされて、アクション俳優として活動し、30代は任侠ものや『愛のコリーダ』(1976)で主演を務め、40代はダンディな俳優として人気を博し、近年は優しい祖父役も演じていらっしゃいます。ご自身のキャリアの変遷を振り返ると、どのような役者人生だったでしょうか?
それはもう、ありがたいという言葉に尽きます。20代から70代まで、それぞれなんとなく自然にというか、10年ごとに節目みたいなものがありましたね。いただける役も変わってきて。ただ、「同じような作品はやらないようにしよう」「この系統はもうやった」と、そんな風に考えながらやってきました。長く続けるためには、飽きちゃうといけないですから。
おもしろがって取り組めるものが一番ですね。役をいただいて、「どういう風にしたらいいんだろう」と考えるのがおもしろいんです。おもしろがれなくなったら、もうおしまいですよ。
ただ、今でも役に入る前は怯えたりしますね。自分にできるんだろうかって。怖がりながら準備するのは、昔からずっと変わりません。1年生感覚は、ずっと抜けないですね。
――この作品でもそうでしたか?
そうでしたね。いつも「やれる」と思うまでには、相当時間がかかります。この作品は今まで演じてきたのとはまたちょっと違うコメディだし、いかにもおじいちゃんっていう感じの人たちが出てきて、自分の役もそのひとりでしたから。