日本主導でハリウッドのスタッフを雇うという、驚きの制作スタイル!
――「聖闘士星矢」といえば、誕生から35年以上を経てもなお、関連作品が作られ続ける伝説的漫画。なぜ今になって実写映画化したのかが気になるところです。
実は、原作者の車田正美先生には、長年“ハリウッドで「聖闘士星矢」を映画化できたら…!”という想いがあり、これまで何十年にも渡ってテレビアニメ化を手がけた弊社と実写映画化企画を模索してきました。その結果がようやく実現したのです。
――本作は“ハリウッドのスタッフで作っているが出資は100%日本”という部分にも注目が集まっています。こうした制作スタイルというのは、珍しいものなのでしょうか?
確かに、我々東映アニメーションが主導し、出資も100%をしているので、日本主導の映画と言えます。1960年代から1970年代前半に、イタリア製の西部劇映画である“マカロニ・ウエスタン”が流行りましたが、構造的にはそれに近いかもしれませんね。
こうした構造の映画というのは、日本が伸び盛りだった80年代や90年代には日本のゲーム原作の映画化企画や、ホラー映画などのジャンルでよくチャレンジされてきた印象があります。ただ、かなり費用がかかるプロジェクトなうえ、海外のスタッフとの連携やクリアするべきハードルがいくつもあるので、邦画界でメインストリームな映画制作スタイルではありませんでした。
ですが、先人たちが経験してきた苦労や困難と同じ道を歩んでしまっては次に繋がらない部分も多々あるので、今回の作品がいいロールモデルになればという思いもあり、私自身こうしたスタイルの映画作りを綴った書籍や、業界関係者に話を聞きつつ、乗り越えるべきハードルをしっかりと勉強して企画を進めました。ですので、今回映画化が無事成功して、非常に嬉しく思っています。
――実写映画化でファンが心配するのは、“原作の雰囲気を台無しにされるのではないか”ということでしょう。このことは制作中にも気にされていましたか?
もちろんです。むしろそれこそが本作を作る上で一番大事だったと言っても過言ではありません。そして批判の多い漫画・アニメの実写映画化でありがちなのは、膨大な原作ストーリーを無理に一作にまとめようとすることでしょう。ですから、本作は思い切って物語序盤の要素を中心にしました。そうすることで、シリーズの肝であるキャラクターの葛藤や心情がぐっと出たと思います。
また表層的に原作要素をなぞってもファンは納得してくれません。ファンを納得させる漫画・アニメ原作の実写映画というのは、シリーズの要素を残しつつも、その根幹であるテーマや情熱をしっかりと持っている作品だと私は思っています。