世代やジェンダーにとらわれず、世の中や「自分自身」を知ろう

——これまでのお話から、学校は「価値観を育む場」とも言えると思います。最近、中堅・ベテラン社員から「Z世代の価値観がわからない」という声が上がるようですが、Z世代が教えられてきた価値観はどのようなものでしょうか。

若手社員として働くZ世代の若者は1990年代中頃の生まれからで、特に2000年以降に生まれた人たちは小学校の後半くらいから2008年の学習指導要領に基づく授業を受けています。当時は「ゆとり教育」の揺り戻しを受けて授業時間が増加し、「持続可能な社会の構築」に関しても学ぶようになった頃です。

また、すでに中学校や高校で「情報」について学ぶようになり、「総合的な学習の時間」も設けられていたので、ICTや国際化、福祉・環境などの社会的な課題に目を向ける機会も多かったでしょう。

以上から考えると、Z世代にはICTを前提とした社会やグローバル化、サステナブルへの意識が他の世代よりも高いかもしれません。もちろん断言はできませんが、今の社会が向かっているSDGsのような方向性を受け入れやすいのかなと思います。こうした価値観を理解すれば、Z世代の価値観に近づけるかもしれないですね。

——価値観といえば「男女の役割に関する価値観」も常に議論を呼んでいます。性別にとらわれずに自分らしく生きるためには、どうしたらよいと思いますか?

性別に起因する悩みは多いと思いますが、自分の人生をどのように切り拓いていくのかを決めるのは自分自身です。男性・女性として想定される「人生の成功」を目指して、周囲の目を気にしながら敷かれたレールの上を走り続けるのは、もはや過去のステレオタイプな生き方だと思います。これからは一人ひとりが自分で考えて判断し、「自分らしさ」に基づいた意思決定ができる力をつけていきたいですね。

技術・家庭科が男女共通になって30年。それでも女性的イメージが付きまとう理由と「男性家庭科教師」が担う大きな役割_3

そのために必要なことは、今社会で起きていることを知り、自分とは異なる立場・考えを持つ人の話を聞いて、視野を広げていくことです。「多様性の時代」と言われますが「みんな違ってみんないい」で終わらせず、その違いから学び、気づき合う機会が大切です。それは学校教育や対話的な学びに期待されることでもあります。

自分の「当たり前」が絶対的なものではない、という気づきに根ざした柔軟な感性をもって、物事を相対化してみてはどうでしょうか。

そして、性別はひとつの属性に過ぎません。「ジェンダーとは、身体的差異に意味を付与する知である」と言ったのは、ジョーン・スコットという歴史学者です。「女だから」「男だから」という身体的差異を前提とせず、「あなた自身」がどういう人なのか、何が好きでどんなことが得意で……という「自分」をしっかり見つめるところから、自分なりの「価値」が創られていくと思います。