――『発病編』を読んだ後に、相原さんの『Z 〜ゼット〜』を読み直してみたら、少し似ている感じがしたんです。ある日突然、みんなゾンビになっていくんですけど、原因や謎が明かされないまま淡々と日常が描かれていく。その理不尽さというか、理由のなさみたいなものが共通しているのかもしれません。
相原 理由のない笑いが好きなんですよ。伏線回収とか種明かしとか、そういうのは極力したくない。諸星大二郎さんの『鯖イバル』って短編があるでしょ? あれが大好きで。
砂漠で遭難してさまよっていたら、突然、バカでかいサバ缶が現れて、なんとか開けようとするんだけど開けられなくて、結局みんな死んじゃう。あのサバ缶に理由なんてないし、種明かしも伏線回収も何もない。でもそれでも笑えるというか、おもしろいものが素晴らしいと思っちゃうんですよね。
――ただ、ギャグマンガ家としての相原さんは『サルまん』とか『コージ苑』とか『相原コージのなにがオモロイの?』とか、かなりロジカルでコンセプチュアルな作品を描かれてきたと思います。
相原 コンセプトって、「企画書」を書く感じなんですよね。もともとそういう企画書みたいなものを書くのは好きだったんで、それをそのままマンガとして描く感じ。
――なるほど。ある日突然、理由なく生まれる「ギャグ」を描き続けてきた相原さんが、ある日突然、理由なく「うつ」になる世界を描く、という作品だったんですね。
相原 そうかもしれませんね。うつは「脳の病気」で、物質的な病なんだと主治医に言われて、ぼくはちょっと楽になったというか、前に進めたんで。ある種のバグみたいなもんですよね。そういうことは描きたいと思ってますね。
――ここから先、どのように復活していくのかも気になります!
相原 ありがとうございます。ぜひ楽しみにしていただければと思います。
【漫画】【うつ病になってマンガが描けなくなった…!】マンガ家暦37年の大ベテランがコロナ禍でうつ病に。それでマンガが描けなくなって…。
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取材・文/安藤 優己人