―『発病編』は発売後すぐに増刷がかかったとのことでしたが、読者に受け入れられた理由はなんだと思いますか?
相原 それはある種のスキャンダリズムじゃないかと思っていて。昔『スナッフ』や『グレートハンティング』って映画があったじゃないですか。
「本当の殺人シーンやライオンに人が食い殺される映像を収めた」という触れ込みで公開された、モンド映画と呼ばれるジャンルがあるんですけど。それと同じで、読者の「怖いものをみたい」という好奇心を満たしてるのではないかと。
――1巻で描かれる首吊り自殺を試みるシーンが衝撃的でした。
相原 はい。でも結局、愛猫の“きゅんきゅん”に見つめられて断念するんですけどね。この子の前では死ねないと(笑)。その後も溺死を試みたりするのですが、辛くてやめてしまったり。
そういった細かな感情の動きもできるだけリアルに伝えてくて。そういった意味で、モンド映画のような「やらせ」はないですね。
――では、読者に向けて何かコメントを求められても難しいですか?
相原 そうですねえ。
でもあるとしたら、あんまり「心の病気」と思いすぎないでほしい、ってことですねかね、うつを。仕事のストレスとか、人間関係とかで塞ぎ込んでうつになっちゃう、みたいなイメージが強いと思いますけど、そうとは限らない。
ある日突然、なるんですよ。棋士の仙崎学の『うつ病九段』でも描かれてましたけど、特に心の問題を抱えていなくても、誰でも突然なる可能性がある病気なんです。