無数のメディアに広がるVTuber文化が
超えるべき今後のハードル
今後のVTuber業界の展望について高橋氏の考えを伺った。
「思うに、VTuberが最初に世間にウケたときは、“アニメキャラクターが現実に出てきた”という驚きが多かったように思います。もちろん、人気が加速したのは彼女たち自身の個性と努力によるものですが、黎明期のVTuber人気には“表現の新鮮さへの興味”が共通していたのは間違いないでしょう。
こうした新鮮さが落ち着きを見せ始めたときに重要になってくるのは、これまで話してきたような視聴者との密なコミュニケーションや、溢れ出る個性です。その際に人気を牽引していくのは、やはりこれらのスタイルを重視している『ホロライブ』や『にじさんじ』といった飛ぶ鳥を落とす勢いの企業勢なはずです」
しかし、ファンコミュニティを超えていろいろなメディアでVTuberが活躍していく時代になったときには、こうした企業にもハードルはあるようだ。
「それは“ファンコミュニティとの間で作られてきた無数の文脈”です。つまり、もともとのファンはさまざまな“お約束”を知っていますが、それを知らない人はVTuber文化にどう触れたらいいのか戸惑ってしまうという“閉じコン化”問題。要するに一見さんにとってやや敷居が高いのです。
皮肉にも、こうした点で言えば、ミライアカリさんら黎明期のVTuberが展開していた“王道のわかりやすさ”や、初めてでも見やすい動画コンテンツは大きな武器になり得ます。こうした見せ方のバランスを今後トップVTuberたちがどう取っていくのかが注目ですね」
ミライアカリの引退劇はVTuber文化の転換点だったのかもしれない。
偉大なる先人が築いた道の先で、VTuber文化が今後どのような広がりを見せていくのか、まだまだ目は離せない。
取材・文/TND幽介(A4studio)