結核で死にかけた15歳。「国は俺を助けて得したな」
――このたび、「グランドジャンプ」で『静かなるドン』の新作がスタートすることになりました。
2、3年くらい前から電子書籍で『静かなるドン』が、ケタ違いに売れ出してね。どうしたもんかと思ったら若い人が読んでくれているっていうことで、だったらまた描いてみたい気持ちになりました。
初めは、10年前に終わった漫画をなんでそんなに面白がって読んでくれているのかと、不思議でしょうがなかったけど、どうやら読み出すと止まらなくなる麻薬性のようなものがあるみたいなんですよね。
――電子書籍でヒットしたきっかけというのはあるのでしょうか。
いまほど売れてないときでも、3か月にいっぺん電子書籍の印税はそれなりの額が入っていたんですよ。だったら、もう描かんでもええかなって思ってた(笑)。
それが、あるときから桁がひとつ違うわけ。月によっては、それがもっと多くなったりして。「どうしてかな?」と担当編集に聞いたら、ある漫画アプリが仕掛けたと言うんだよ。
長編ものだから60巻まで無料にして、続きが読みたくなる気持ちを狙って課金してもらおうってことでね。それが当たったんだ。そんなに売れてるならってことで、他の電子漫画アプリも『静かなるドン』を配信しはじめて、とんでもないことになった。
――2020年には、電子版の売り上げが年間6億円にものぼったそうですね。
日本テレビ系列で『静かなるドン』のドラマ(1994年・主演:中山秀征)をやっていた全盛期と同じくらいの規模ですよ。とはいえ、多くはそのまま税金だからね。まあ、右から左へ素直に払ってますよ(笑)。
俺、15歳の頃に結核で死にかけてね。貧しくて粗末なものばかり食べてたんでしょうね。それで入院したんだけど、結核って、法定伝染病で医療費がほぼかからないんです。だからいつも「国は俺を助けて得したな」とギャグで言ってます。
俺が死んだら今頃こんなに税金は入ってこなかったんだぞってね(笑)。