絶対に裏切らない「男の友情」を描きたい
――読者としては、そこも面白く読んでいるところではありました(笑)。
今回は、龍宝(国光)と鳴戸(竜次)にスポットを当ててこうかなと思っていてね。あのふたりは水魚の交わりみたいな契りを結んでますよね。なんであそこまで仲がいいのかという、その背景を描こうかなと。龍宝がなんであれだけの狙撃技術を持っているかという理由も明かされます。
あとは、静也の仕事も下着会社のデザイナーからゲームメーカーに変えました。そこは時代の変化もあってね。だから、エロもあまり入らない。そういうのを狙っている漫画じゃないから。もともと俺が描きたいのは、男の友情みたいなものなんです。
いまの若い人は、絶対に裏切らない関係に憧れるんじゃないかと思うんですよ。だからそういった男同士の話を描きたいたいと思っています。
――静也の説得力ある名言も作品の魅力です。新作でも期待していいでしょうか?
そうですね。いまはヤクザが減って、半グレが増えている風潮があると思います。特殊詐欺にしても、半グレがやってる場合もあるらしいけど、上にもっと悪い奴がいたりもするんだよね。盃をやらずに悪いことをさせてるヤクザもいるって話も聞きます。だから新作の1話目から半グレを出して、それはどうなんだろうっていう話を描こうと思っていて。
いまの若い人はかわいそうな感じもするんですよ。昔は怖い大人がいて、本気で怒ってくれたでしょう。本気で怒る大人がいれば、こんなひどい世の中にはなってないと思うんです。だから、静也に「お前らも可哀想にな、昔は怒ってくれるやつがいたのに」ってことを言わせたいなとひとつ考えています。
――久々に『静かなるドン』を描いてみていかがでしたか?
去年の読み切りが9年ぶりだったんだけど、意外と描けるもんだなと思いましたよ。でも、やっぱり腕は鈍ってましたね。
「グランドジャンプ」は隔週誌だし、俺は速いから余裕で描き進められるんだけど、バック(背景)までひとりでやるのは無理だよね。いまの漫画のレベルでひとりですべて描いてる人って、相当命を削ってると思います。
前はうちもアシスタントが3人いたんだけど、連載終了したときに退職金を渡して解散しちゃったんだよ。みんな別のところで仕事をしてるから、すぐには戻ってきてくれないでしょ。そこはなかなか苦労しています。今後のドンの生命線は、ひとえにアシスタントにかかってるんじゃないですかね(笑)
【#2「静かなるドンが24年も長期連載できた理由」へつづく】
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取材・文/森野広明 撮影/松田嵩範