「寂しさ」と「犯罪」の関連性
北尾 廣瀬さんの会社は現在、社員40数名かいるんですけど、8割以上は出所者ですし、廣瀬さん自身もそうです。
高橋 廣瀬さんは覚醒剤取締法違反でも、使用ではなく、売人をやっていたんですよね、栃木界隈で。
北尾 そうですね。彼女は中学入学と同時期に荒れ始めて。でも根っこは、別に貧困とかではないんです。比較的裕福な家の人なんだけど、まあ、寂しいとかそういうことですね。
高橋 寂しさって犯罪とすごい関わりありますね。
北尾 うん、関わる、関わる。あとは廣瀬さんは1978年生まれで、中学上がるときは90年ぐらいじゃないですか。当時の栃木にはまだヤンキー文化があった。学校もまだ荒れてて。それに憧れて、髪染めて、制服も改造して学校に通っていた。
高橋 でもそうすると先輩に目をつけられますよね。
北尾 「髪を黒くしろ」とか「服を普通にしろ」とか言われ、断ると殴られ蹴られ、という日常が始まった。だけど廣瀬さんは気が強いから、言うことを聞かないわけです。なので学校が終わると、毎日のように暴力を受けて。そのうちだんだん学校に行かなくなり、同じように昼間からブラブラしている他校の生徒とつるんで遊ぶようになって、荒れていくんです。もうそこからはね、まあ読んでいただくのが一番いいんですけど、怒涛のごとく……。
高橋 すごい波瀾万丈の人生ですよね。
北尾 廣瀬さんに2〜3時間、話を聞いて、「えーと、廣瀬さん、今、何歳の話でしたっけ」って聞いたら「いや、まだ14歳」とか。濃厚ですね。それがやっぱり僕はもうビックリだったんです。僕なんかは平々凡々に育って、ヤンキーにもならなかったので、裏社会や犯罪にもあまり縁がなかったわけですね。だから世代も全然違うとはいえ、もうビックリの連続で。
高橋 この本で、写真家の中川カンゴローさんと一緒に取材をしている理由は、その「ビックリ」とも無関係ではないんですよね。
北尾 そうです。僕は裁判所でいっぱい傍聴してきて、いわば耳年増みたいになってるわけですよ。だから、大事なことを聞き流しちゃうことがあるんじゃないかなというのと、こういう世界があるってことをリアルに知らないような人にこそ読んでほしいと思ったときに、その人たちに分かる言葉で書かないと読んでもらえないなと思って。あとはやっぱり、話がすご過ぎて漫画みたいなんです。例えば僕が話を聞いて、家に帰って、うちの奥さんに「今日こんなんだったよ」って話しても、出来過ぎてると言われてしまう。だから、これは写真で記録して、実在するんだってことをちゃんと見せないとダメだなと。