「この人とまた働きたい」と思ってもらえるような仕事をする
——何度か転職を繰り返して「やめグセ」がついてしまったら嫌だと思う人もいます。やめグセをつけないコツはありますか?
転職の準備運動を通して「自分の軸」をきちんと決めておくことが大事ですね。
転職活動は文化の違う会社へ飛び込む行為なので、例えるなら海外移住のようなものです。そんなリスクを冒してでも転職したいということは、大きな不満があるからなんですよね。まずはその不満と向き合っていただきたいです。
その上で、どこか違う会社に行って不満が解消されることは、かなり稀だと思ってください。よくあるのは、上司が嫌だから転職した人が、転職先でさらに嫌な上司に出会うこと。そう、不満はどこにいってもあるのです。
まずは自分の中の「嫌なこと」をノートなどに書いて言語化してみましょう。一度退職することを前提に書き出す「退職成仏ノート」を作るのです。その書き方は『「会社辞めたい」ループから抜け出そう!転職後も武器になる思考法』(サンマーク出版)で紹介しています。そうやって書き出すと「本当に解消できない不満」と「自分が工夫すれば解消できる不満」とに分類できることもわかります。
そして不満を整理しているうちに、だんだんと心が落ち着いて不満の本質を見つめられるようになります。その結果、自分の軸、つまり「私が本当に転職したい理由」が見つかるというわけです。
——佐野さんにとって「よい就職・転職」とは何でしょうか。
これからはますます、一度就職しても転職する人が増えると思います。仮に自分は転職しなくても、一緒に働いていたメンバーが辞めていくこともあります。「環境が変化する」という意味では、同じ瞬間は二度と訪れないのです。
だからこそ「もう一度この人たちと働きたい」「もう一度この仕事をしたい」と思えるくらい惚れ込んだ会社や仕事を見つけられたら、よい就職・転職ができたということのではないかと私は感じます。
——転職は「人生探し」のような側面もありますね。
そうなんです。仕事は食っていく手段としてだけ選べばいいものではありません。働き方という”How”を変えたかったら、「なぜ働くのか」という“Why”や「どう働くのか」という"What”を問い直さないと、いつまでたっても変わらないのです。転職をしても同じことの繰り返しになります。
これからは転職が前提になる時代。そのなかで私たちはずっと「いつ仕事がなくなるかわからない」という不安状態に置かれます。
その不安への対策は、退職後も声をかけられるような辞め方をすることだと思います。仕事は自分だけで作るものではなく、誰かが運んできてくれるものです。だから「また一緒に働こうよ」と声をかけてくれる人が常にいるような転職ができたら、不安のない生き方ができるのではないでしょうか。
確かに終身雇用はしがみつくには頼りないものになってしまいました。でも、安心と挑戦のバランスをとれる「セルフ終身雇用」は作れます。それは転職の度に「あなたとまた一緒に仕事がしたい」と声をかけられる自分になる働き方です。ストレスのない働き方は、確かに作れます。
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