胃がんの原因になるピロリ菌

代表的なものがピロリ菌だ。
ピロリ菌は、衛生環境の悪い水を飲んだことなどによって感染する。なんとも厄介なことに、このピロリ菌は食道を通過し胃にたどりついたのち、強力な胃酸を浴びても胃酸を中和、無力化することでケロッとして、そのまま胃のなかで生活をはじめる。

現代は衛生環境の改善により、若者の罹患率は格段に低下しているが、こと明治・大正・昭和の時代などに関しては衛生環境が十分なものではなかったため、井戸水や汚染された水からピロリ菌を体内に取り込んでしまい、そしてそのまま胃の中に住み着いてしまっていた。そして気まぐれに胃の壁に病原性を持ったタンパク質を注入し、胃がんを引き起こすことがある。
だがピロリ菌は絶対悪のような存在ではなく、ピロリ菌を除菌することで逆流性食道炎(胃酸が逆流して食道がただれ、炎症を起こす)になりやすくなったり、アトピー性皮膚炎が悪化したりするケースもある。
住処を与えられている分の恩返しはしてくれているつもりなのだろうか。
もっとも「除菌しても胃を荒らしたあとでは意味がない」という説もあり、エビデンス(根拠)として除菌の有効性が確立されているわけではない。しかしアメリカの退役軍人37万人を対象にした研究では、ピロリ菌除菌によって胃がんのリスク低下が示された論文も存在する。

個人的には、胃がんのリスクを上げるとされている細菌がもし住み着いていたとしたら、そのまま胃の中で飼いならしていこうという気分にはならない。

がんになる人の4人にひとりは感染症が原因。ピロリ菌、肝炎ウイルス、性行為でうつるウイルスも_2