がんより怖い“悪魔の耐性菌”
しかし、もしあらゆる抗生物質が効かない耐性菌が出現し、その細菌が世界中で流行してしまったらどうなるだろうか?
似たような事例を我々は近々で経験している。そう、新型コロナウイルスの出現だ。新型コロナ出現時は確立された治療法も、ウイルスを退治する薬もなく、現場では手探りの治療が続いた。
耐性菌の問題については、当時の新型コロナウイルス出現時と同様、あるいはそれ以上の大惨事になる恐れがある。たとえば、病院ではさまざまな手を尽くしてもよくならない患者に奥の手として投与する「抗生物質の最終兵器」とも呼ばれる“カルバペネム”という抗生物質が存在する。
しかし、この最終兵器である抗生物質に対しても耐性を持ち、なかなか効かない細菌が出現してきていると、アメリカ疾病予防センター(CDC)も警告を出している。つまりはいつ“悪魔の耐性菌”よって悲劇が引き起こされるかわからないのだ。
現状のペースで耐性菌が増え続けると、2050年にはおよそ1,000万人の死亡が想定されていて、この数値は現代のがんによる死亡者の数を超えるといわれている。
多くの人類の命を救った抗生物質。
しかし現代ではその抗生物質の影響によって、今度は逆に細菌の逆襲を受けようとしている。
我々が“耐性菌パンデミック”を避けるためには、患者側が耐性菌に関する正しい理解を持ち、むやみに抗生物質を希望しないこと。そして、医師側もむやみに抗生物質を思考停止で処方しないことが重要だ。
「風邪に抗生物質」と決まり文句のような処方をしている旧態依然な医師も散見されるが、既にこれは完全に時代遅れであり、有害とも呼べる医療行為だ。
新型コロナウイルスの影響で感染症に対して関心を持つ人は増えたと思うので、耐性菌についての知識もぜひ覚えておいてもらいたい。
●予防方法
・やみくもにクリニックで風邪のとき抗生物質の処方をお願いしない。
・何でもかんでも抗生物質を出す医者は「ヤブ医者」の可能性大(予防方法というわけではないが気をつけてほしい)。
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