抗生物質の発見

抗生物質の歴史はまだ100年ほどだ。
誕生は、1920年代のイギリスに遡る。当時、英国で細菌の研究をしていたフレミング博士という1人の研究者がいた。彼は連日細菌の培養をおこなっていたのだが、ふととある培地を見ると、培地一面にアオカビが生えてしまっていた。

そして更にカビの生えた培地をまじまじと観察すると、なぜかそのアオカビの周囲には細菌がまったく育っていない。

この現象から「カビの成分と何らかの関係があるのでは?」という仮説を立てたフレミング博士がカビの成分を調べたところ、なんと青カビの作る“ペニシリン”という物質がブドウ球菌という細菌の成長を抑えることが発見された。この大発見はのちの世界初の抗生物質である“ペニシリン”誕生のきっかけになり、のちにペニシリンは多くの人の命を救うことになる。

当時は戦闘中の傷からばい菌が体内に入り、非常に多くの兵士が感染症で命を落としていたのだが、このペニシリンの出現により状況は一変。たとえば、第二次世界大戦で連合国軍がドイツ軍に攻撃を仕掛けたノルマンディー上陸作戦では感染症による死者が激減した。

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またペニシリンの発見以降、抗生物質の開発はどんどん進み、昔は不治の病と呼ばれていた結核も“ストレプトマイシン”と呼ばれる抗生物質により治る病気になり、現在では結核の罹患者数は激減している。

このように、抗生物質は人類にとって多くの尊い命を救った、偉大な発明品であることに疑いの余地はない。
しかし、抗生物質が一般的に完全に普及し、世の中に知れ渡った現代では、抗生物質のもうひとつの負の側面にも注視しなければならない状況になってしまった。

それが“耐性菌”の出現だ。